第211話 好奇心で猫に殺される ♥
寝る前にフィリアナと少し話をした(このエピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)
フィリアナが去った後、俺も寝るために寝袋を引きずり岩に寄りかかった。ふと隣を見るとエレナーゼが横たわって目を閉じている。
俺は気づかれないようにそっと背中を撫でてみた。少し硬いがつるつるとしていてさわり心地はいい。しばらく撫でていると彼女が目を開けてこちらを見たのですぐに手を離した。
「あっ悪い」
「フフ別にいいのよ、あなた猫が好きなんですってね。それで井戸に落ちて世界転移なんてお気の毒に」
また違う噂が流れているようだが訂正せずそのまま撫で続けた。やはり猫の背中は温かくて気持ちがいい。特に腰から尾にかけてのなだらかなラインが好きなのだ。
そういえば猫は尾の付け根を叩くと気持ちよさそうにするがどのように感じているのだろう。これはもしかして感想を聞けるチャンスではないのか?
俺は優しくポンポンと叩いてみた。彼女からは何の反応もない。今度はもう少し力を入れて叩いてみた。すると小さく声をあげ前肢を組み直した。やはり何か感じるところがあるのかもしれない。
「ん、ちょっと、なによ」
さすがに不審に思ったのか、もぞもぞと動きながらこちらを振り返った。俺は続けて叩いてみたり指先でくすぐってみた。
「あっ、なに?な、なに、やっ、やめなさい、よ」
未知の感覚に戸惑っているようだが俺の手に合わせ腰を揺らし自分から当てているようにも見える。叩くたびに尾が上にあがってゆく。
「ん、アッ、なっだめっ、ンッ……!」
俺はなんだか面白くなって続けてしまった。
「なあ今どんな気分だ?」
「い、いやッ、やっアッ、、イっ……はぁァ、イッ、、ヤっ……」
「えっなんだって?」
「やめろって言ってんだろ!!」
顔を近づけたとたん目の前が真っ赤になった。鼻の付け根に激痛が走る。悶える俺を置いて彼女はフイとどこかへ行ってしまった。
「あーらら、兄さんふられちゃったね。始めから動物とはちょっとハードル高すぎるんじゃない?」
「頼む静かにしてくれ」
こいつは一体なんなんだ、なぜいつもこういうタイミングで現れる。
「まあまあそう言うなって、消毒してやるからこっち向いて」
俺が顔を向けると信じられないことに飲んでいた酒を吹き掛けてきた。傷どころか目も滲みる。
「あ゛ーーくっそーお前なんて嫌いだ!」
「知ってるか?酒には消毒効果があるんだ」
カルベネの笑い声が遠ざかるのを聞きながら俺は一人寂しく顔を洗った。