第210話 いつもと同じ夜
水場で不思議な鳥に出会った
日も落ちてきたので今日は野宿をすることにした。昼間とはうって変わり今度は肌寒い。カルベネが大声を出しながら大袈裟に地面に寝転がる。
「うわー疲れた、兄さん次の町はまだ?もう死んでしまう」
「そんなんじゃ死なねえよ、と言うか酒ばっかり飲んでるのが悪いんじゃないのか」
彼女はみんなが水を飲む中、なぜか酒を飲んでいるのだ。そこへ起きてきたヴェロニカがタバコを片手にやってきた。
「あーあー姉さんはいいよな一日中寝てて。私も荷車に乗りたい」
彼女は地面に倒れたままのカルベネを無視しタバコの火を横の岩で消した。そしてそれを地面に落としかけ思い出したようにビンの中に入れた。どうやら俺の言ったことを覚えていてくれているようだ。
「あ?姉さん、ちょっとそれ私の酒じゃない?ねえ、途中まで飲んでたと思うんだけど」
以前捨てていたのはカルベネの酒だったみたいだ。まあわかってはいたが特に気にすることではなかった。
ごねるカルベネを尻目にヴェロニカはわずかに視線をこちらに向けた。
「お前異次元から来たんだってな、こいつから聞いたぞ」
あながち間違ってはいないがカルベネのことだ何と言ったのかわからない。
「そっちの世界はどうなんだ、やはり同じなのか」
「そうだね似ているところもあるけど、例えば生き物とかある物とか。でも似ていると言うだけで全部同じじゃない」
俺の言葉にヴェロニカはそうか、とだけ答えた。うるさかったカルベネはすでに足元で眠っている。他のみんなもそれぞれ寝る支度を始めた。
「あら故郷のお話ですか?わたくしヒロさんの世界のこと聞くの好きです」
話を聞きつけたフィリアナが俺の隣に座った。
「一度見てみたいですね、どんなところなのでしょう」
いままでは自分の世界など大して面白味もなくつまらない場所だと思っていた。だが今となってはその退屈さが恋しい。
「いや思ってるほど面白いところじゃないけどね。みんなは自分の家が恋しくならないのかな」
「そうですねどうでしょう、わたくしは兄さんのことが少し気がかりです。それから母のことも」
やはりみんなも同じなのだ。それはそうだ、こんな旅に成り行きでついてくるようになって後で後悔したかもしれない。
「ごめんなこんな旅に付き合わせてしまって。俺がもう少ししっかりしてれば楽に行けたかもな」
「あらそんなこと、旅を始めたのはわたくしですから。それに今まで生きてきてこんなに楽しいと感じたことはなかった。故郷にいたころわたくしは自分のことが嫌いでした、男に生まれていればどんなによかったか、そんなことばかり考えていました」
俺はフィリアナが初めて出会ったときこんな体に望んで産まれてきたわけではない、と言っていたことを思い出した。
「でも今はこれで良かったと思えるのです。だってもしわたくしが男で兄さんと肩を並べて騎士になっていたらこんな楽しいこと体験できなかったでしょうから」
それはこちらもだと言う前に彼女はおやすみなさいと言って席を立った。