第207話 故郷の味
半壊した町を仕切っているタッドに会いに行った
町はかなりめちゃくちゃになっていたため物もほとんど売っておらず水ぐらいしか手に入らなかった。まあ想定内だしすでにあらかたそろえてあったので大して問題ではないが。
俺たちは今一度タッドに礼を言って町を後にした。続いて向かうのはキンナラたちのところだ。俺とフィリアナは二度立ち寄っているが、みんなは初めてだ。朝出発したので昼過ぎに到着することができた。
最初に寄ったとき案内してくれた少女がこちらに手を振りながら駆け寄ってきた。
「みなさん良く来てくれました、お昼ご飯食べていきますか?」
まだなにも食べていなかったのでありがたくいただくことにした。俺たちは外に敷かれたラグの上に案内された。
「ちょっと待っててくださいね、今持ってきますから」
彼女は笑顔を見せるとせかせかとどこかへ走っていった。その間にも沢山の人に声をかけられる。
「おーアラスコ元気にしてるか、良く来たなケンタウロスたちはどうだ?」
「おかげさまでみんな無事でした。ありがとうございます、今町にタッドさんがいるので今度行ってみて下さい」
朗報に皆へぇーとうなずいている。もう名前を間違えられているのにはなれてきた。
「そうか、いや実はな町ができるって聞いたから俺たちも商売しようと思って馬やロバを用意してたんだ。無駄にならなそうでよかった」
そんなことを話していると先ほどの彼女が手に皿を持って戻ってきた。中にはカレーのような茶色い料理が盛られている。立ち上る香辛料の香りはやはりカレーだ。まさか異世界に来て食べることになるとは。
横から子供が来て目の前に丸く平たいパンを置いていった。
「お口に合うといいのですが」
「なんだかおいしそうな香りですね、わたくし初めて見ました」
フィリアナがうれしそうにパンにつけてほおばる。それに続いてみんなも食べ始めた。味は少し癖があるがそれでもまるで専門店のようでおいしい。懐かしい味にどんどん手が進む。
「うん、うまいな」
「結構いけんじゃん、あたし好きだなー」
ニーナもお気に召したようだ。だがここで皆一斉に手が止まった。次第に舌の先が火であぶられているかのように熱くなってくる。すぐに口全体がしびれるように痛み出し激しく咳き込んだ。
「うえ~からいよー」
一番辛いのに弱そうなピヨがのた打ち回っている。
「いやーみなさん辛いの好きなのかと」
「ちょっあんたたちこれいつも食べてるの?!」
口を押さえるニーナにスッと横から何か差し出した。
「これ入れます、ミルクです。味がまろやかになりますよ」
「は、早く言って……」
俺たちは悶絶しながら水を競うように飲んだ。