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第201話 荒野を駆ける濁流

ビーストテイマーに命の危機にまで追い詰められた

 俺とビーストテイマーの男はそろって縄が投げられた方向を見た。そこには先に逃げたはずのアーグナが立っていた。彼は近くの黒い馬にひょいと縄のもう片方を輪にしてかけた。


「おいお前なにしてくれる!」


 男が怒って一歩踏み出したときアーグナは掛け声とともに馬のけつを叩いた。


「さ、仲間の下へ帰りなさい」

「ちょっ、ちょっと待てあああーー」


 走り出した二頭の馬とともに男は引きずられて荒野の彼方へと消えていった。俺は砂埃をはらって落とした短剣を拾った。


「はあ、ありがとう助かったよ死ぬかと思った」

「ハハハ、礼を言うのはこっちのほうさ。行こうみんな待ってる、僕の背に乗って」


 俺とシャリンはそれぞれアーグナとヨーラの背に跨った。満点の星空の下を駆け抜けるのはまるで自分も風になったようで爽快だ。汗が乾き気分がいい。


 少し進むと仲間が途中で待ってくれていたようだ。二人の生還に皆、手を振って喜んでいる。その中からフィリアナも現れた。


「ヒロさん、シャリンさん、ああ良かった姿が見えなくてどうしようかと」

「いやー最後にとんでもないのに捕まっちゃって」


 俺たちが合流した後、群れは今度こそ全員で走り出した。大勢のケンタウロスが走る様は豪快だ。力強い蹄が大地を蹴り上げ砂が舞い、まるで押し寄せる濁流のように轟音を荒野に響かせる。


 その中で一緒になって走るフィリアナは故郷に帰ってきた旅人のようにうれしそうな顔をしている。


 集落が近づくと一番にあの少年が走ってきた。細長い脚をばたばたと動かし自分の父親に抱きつく。後ろから彼の母親が小走りで迎えに来た。彼女もまた目に涙を浮かべ満足そうな顔をしている。


 長と仲間の帰還に集落中から歓声が上がる。アーグナの父はタッドの背から下ろされ安全な場所へと運ばれた。役割を終えたタッドがこちらを振り返った。


「おい小僧、いやアリスガワお前には借りができた。礼を言う、そしてお前の勇敢な仲間にも」


 そう言って彼はシャリンを見た後、フィリアナに視線を移した。


「無礼なことを言ったな、名をなんと言う?」

「わたくしはフィリアナ・グラニム。気にはしていませんから大丈夫ですよ」

「そうか、フィリアナ。一生忘れないだろう、ではしばらく休んでいってくれ」


 彼は向きを変えると帰っていった。


「うふふ、良かったです。今回は上手く行きましたね」

「ま、まあな……はあ、疲れた」


 本当にみんな無事で良かった、と言うが一番死にそうになっていたのは俺だったが。とりあえず少し何か食べたら寝よう、高揚感も抜け体が鉛のようだ。


 半ば倒れるような形で荷物の近くに腰掛けるともうすでにまぶたが下がってくる。いいやこのまま寝てしまおう、そう思い意識を手放そうとしたとき誰かに肩を揺さぶられた。目を開けなくてももうだれだかわかる、俺はわざとらしくため息をついた。


「兄さん、なに寝てるんだほら起きて祝杯をあげなきゃ!」

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