第18話 ナーガプリンセス 1
夜中、またたびに酔ったシャリンに押し倒されてしまった
「ところでアリスガワ、昨日の私が吸った粉は麻薬なのか?」
「いや麻薬ではないよ、猫だけが酔っ払う草から作られているんだ。」
「すると私は……猫なのか?」
歩みを進めながらシャリンが納得できない様子で首を傾げた。しばらく沈黙した後小さい声でそれはお前の世界に行けばもっと手に入るのか?と聞いてきた。もしかしたら中毒性があるのかもしれない、気をつけよう。
しばらく進んだ後、しばし食事休憩を取った。
ここ二、三日の疲労が溜まりぐったりとしている俺とは対照的にピヨは元気一杯で歌まで歌っている。
「はははお前は元気だなー」
「シッ静かに」
突然シャリンが耳を立て辺りを警戒し始めた。
「何かいる!どこだ?」
森が急に静まり緊張が走る。ピヨも歌うのを止めきょろきょろと周囲を見渡している。
そのとき背後の木の上から葉がこすれる音が聞こえた。急いで振り返るとそこには短剣を構えた少女がこちらを見下ろしている。
「チッ見つかってしまった、まあいいわ死になさい!侵入者め!」
次の瞬間少女は刃を向けこちらに飛び掛ってきた。
「危ない!」
俺は間一髪シャリンに押され難を逃れた。ピヨは驚き空中へ飛び上がる。
「命拾いしたわね侵入者」
獲物を仕留め損なった少女は逃がすまいとすばやく裏に回り俺たちの退路を塞いだ。
彼女は人間ではない、下半身がピンクがかった鱗の蛇になっている。同じような色の長い髪をポニーテールのように結んでいる。
「あっあの子は?」
「あれはナーガ族だ、下半身が蛇になっている。力とスピードを兼ね備えた種族だ、か弱い女でも蛇の尾で簡単に人の首を折ることができる」
「ふん、次は逃さない!」
ナーガ族の少女は再び剣を構えなおし今度はシャリンの方へ長い尾をばねのように使いものすごいスピードで突っ込んできた。シャリンは咄嗟に俺とは逆のほうへ回避した。
だが少女は途中で剣を地面に刺し、腹鱗をこすりつけ急停止した。
そしてそのままの勢いで体を急転回させる。
「ハッしまっ……!」
俺と反対方向へ避けたシャリンの体に鞭のようにしなる尾がたたきつけられた。