プロローグ
俺の名前は亜李須川 弘明、22歳のフリーターだ。
大体想像がつくだろうが適当な文系大学を卒業後、特にやりたいことも無くぼーっと日々を過ごしている。もちろん彼女いない歴=年齢だ。今は仕事場から3駅ほど離れた駅近の古いアパートで一人暮らしをしている。
だがそんな俺にもちょっとした楽しみがある。それはアパートのベランダにときどき姿を現す野良猫を愛でることだ。もちろんペット禁止なので部屋にはあげないが、おやつやまたたびをあげては反応を見て楽しんでいる。
そんな俺は今日も今日とて近所のスーパーで購入した夕食とペット用品を手にさげながら帰路についている。
アパートの近くにある公園のかどを曲がったところでなにやら視界にちらりと白いものが映った。
いやよく見るとそれは白い猫のようだ。ここらへんでは見かけたことがない。俺はその猫にそっと近づき周囲に人がいないことを確かめると小さな声で話しかけた。
「なあ、お前みかけないなどこから来たんだ?」
驚かせないようにそっとしゃがみ撫でようとしたが白い猫はこちらを一瞥するとタッと駆け出してしまった。
「ははは、そうだよなぁ」
猫は警戒心が強いんだっけ、そんなことを思いながらふと猫が駆けていった方向を見た。
なんと猫は赤信号の横断歩道の中央にさしかかっている、そこへ大型トラックがスピードを緩めずに突っ込んできた。
「おい! 危ないぞ!」
そんなことを言ったって動物に通じるわけはない。白猫は近づいてくるトラックのライトに照らされながらその場に立ち尽くしている。
気づいたときに俺はトラックの前に飛び出していた。