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第191話 砂にまみれたプライド

ついにキンナラたちも合流し、戦いの準備を整えた

 翌朝、俺はシャリンそしてカルベネと共に町へと先に出発することにした。相手が異変を感じる前にあらかた潜入していなくてはならない。ヴェロニカはというと俺が昨晩頼み込んだところものすごい嫌そうな顔をされたが一応了承を得ることができた。


 日が落ちると共にケンタウロスに跨ったキンナラが出発し、射程範囲ぎりぎりから弓で攻撃する。こちらの攻撃も当たらないかもしれないが気が引ければ十分なのでそれで良いのだ。その隙に俺たちが門を開け、混乱に乗じて捕虜を救い出す。


 俺たちはキンナラから馬を借り町までやってきた。町は相変わらず大勢の人でにぎわっており、前に来たときより人が増えている気がする。


 辺りを見回すふりをして門に近づいた。木で作られたしっかりとした壁にやぐらが立てられそこに監視員が配備されている。今は開け放たれ人が自由に行き来しているが異変があればすぐに閉じられてしまう。果たして三人だけでどうにかすることができるのだろうか。


 そして三人で来たはずなのに早速一人いない。もういちいち探すのも面倒なので俺はシャリンとともに捕虜の様子を見に行くことにした。


 馬小屋の近くにやってくるとなにやら男たちの歓声が聞こえてきた。合間を縫って柵の中を見るとそこにはアーグナの姿があった。


 だがひどいことに彼は両手を縛られて縄でひきずり回されている。囲んでいるうちの一人が我こそはとアーグナの背に強引に跨った。しかし彼はそれに負けじと柵中を駆け回り乗っている男を振り落とそうとする。ものすごいスピードで走った後、急停止し後頭部で乗っている男の頭を打ち付けた。


 たまらず背から転げ落ちた男を見て周囲からああーと感嘆が聞こえる。俺は恐る恐る近くの人に声をかけてみた。


「あの、なにやってるんですか?」

「ええ?先日生きの良いケンタウロスを捕まえたって言うから乗りこなせるかやってるのさ。他のやつらはすぐ折れたが一番若いあの銀髪がなかなか強情でね。でもきっと一番高く売れるだろうから成功したら金がもらえる」


 なるほどだからみんなこぞって挑戦しているわけだ。しかしあまりのむごさに心臓を掴まれたような心苦しさを感じる。彼らのことを人だと思っていない、その意味を今理解した。うまいこと退けていただろうアーグナも度重なるひどい仕打ちにもうへとへとだ。


 ついに彼はその場に立ち止まったまま動かなくなってしまった。息を荒げ脚は小刻みに震えている。隣のシャリンも目線を鋭くし、口を一文字に結んでいる。


「な、なあちょっとかわいそうじゃないか?普通に馬に乗ったほうがいいと思うんだけど……」

「ははは、俺たちはな、でも馬鹿なお偉いさん方は自分の力を誇示したくてやってんのよ。金さえ貰えりゃ俺たちは文句なし!邪魔者もいなくなって一石二鳥ってとこだな」


 アーグナは再び動こうとしたがついに地面へとへたり込んでしまった。うなだれた顔からわずかにのぞいたうつろな瞳はお前もか、と言っているように見えた。

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