第190話 戦いの準備
足りなくなった素材を提供してもらい準備を続けた一行
次の朝地面に倒れているカルベネの横に出来上がった盾が一つ置かれていた。昨晩二人で作ってのだろう。今のところ合計して十二ほどある。新しく解体してできた木材を使ってもう少し作りたいところだ。
俺は早速仕事にとりかかった。みんなも黙々と盾作りにとりかかる。昨日と比べなんだかケンタウロスたちの様子が違う。引越しの準備を止め、皆あわただしく武器や装備を引っ張り出し使えるよう整備をしている。
「みなさんおはようございます」
俺たちのもとへヨーラがやって来た。彼女も昨日とは違い出会った頃のような明るい笑顔を浮かべている。
「聞いてください、戦いに参加してくれる人が増えました」
「そうか、よかった。これで勝算が見えてきたな」
朗報に励まされ俺たちは一日中盾を作り続けた。手伝ってくれていた少年も昨日の疲れなど全くなくなったかのようにはりきって作業に取り掛かっている。
日が沈み始めた頃キンナラたちが集落へとやってきた。総勢二十名ほどで言っていたとおりそのうち数名は肩に大きな弓をかけている。彼らは馬から下りると笑顔を浮かべながらこちらへ近づいてきた。
「やあ、アリスカワ調子はどうかな。作戦は決まったか?」
俺はキンナラたちに考えている作戦を簡単に伝えることにした。
「まずこの大きな盾をケンタウロスに持ってもらう。それでバリケードを作るんだ。その間から長弓で攻撃して欲しい。そうして気を引いているうちにあらかじめ潜入していた俺が門を開ける」
彼らはそうか、と言うように首を縦にふる。
「ならちょうどいいな、これを見てくれ。長槍だ、敵が遠距離だっていうから念のため持ってきたんだ」
そう言ってリーダーらしき男は仲間から槍を受け取った。長さは俺の身長ほどもある。
「これは弓と一緒に狩りで使うんだ。遠くまで飛ばしてもいいし、刺してもいい。それでいつ作戦は決行するんだ?」
「明日の夜にしようと思う。俺の仲間にダークハーピーがいるんだ。えっと、夜目が利く種族なんだけど彼女にも助けてもらおうと思って」
俺は彼女が寝そべっている荷車に目をやった。正直まだ助けてくれると決まったわけではない。だがまあ頼めばなんとなくやってくれるだろう。彼女は怖く見えるが根はやさしいのだ。
「ふむ、ダークハーピーとな。なんだかよくわからんが明日の夜だな。よし、戦いに備えケンタウロスたちと話をすることにしよう」
そう言うと彼らは同じく戦いに参加すべく集まりだしたケンタウロスたちのもとへと向かっていった。