第188話 小さな糸口 2
ローレンと少年に続き盾を作ることにした
俺は彼に作り方を教わり一緒に盾を作ることにした。ピヨとポリーンは一生懸命に廃材を運んでいる。その間にフィリアナとニーナには彼が持ってきた武器の手入れをしてもらうことにした。
「ほぃ~兄さんなにしてんのー?工作?」
どこに行っていたのかふらっとカルベネが戻ってきた。手には新しい酒瓶を持っている。
「おいあんまり無駄遣いするなよ、金は無限にあるわけじゃないんだぞ」
「まあまあそんな硬いこと言わないでくれよ、何事も楽しんでやらなきゃなー」
適当なことを言っているカルベネに俺は持っていたのこぎりを手渡した。
「はい、じゃあ俺の代わりに楽しんでくれ」
「ちょっええ」
「早くここを切り落としてくれ」
下で支えていたシャリンに促されしぶしぶ作業を始めた。
ケンタウロスたちはなるべく荷物を軽くするべくどんどん古びたものを捨てているようだ。集落の端にはゴミの山が出来上がっている。そのなかから使えそうな廃材を拾い、出来上がった盾を補強することにした。
俺は縄をきつく巻きつけその上から蝋を垂らし表面を固めた。他にも捨てられたテントの布を使い取っ手を取り付けたり、毛皮を打ちつけたり無い知恵を絞って自分なりに盾に仕上げを施した。見た目はだいぶ不恰好だが素人にはこれが精一杯だ。
日がかげり始めた頃少年の母らしき女がやって来た。
「ロジャ、何やってるの遊んでないで帰ってきなさい」
彼は母親に笑顔で自分の作った木の板を見せた。
「あっお母さん見てこれぼくが作ったの。みんなでお父さんを助けに行くから待っててね」
汚れた手で雑に汗をぬぐうと再び作業に戻った。母親は何か言いたそうに口を開きかけたが何も言わずに口を閉じた。そしてしばらく息子の後姿を見たあと
「おなかすいたでしょ、ちょっと待っててね」
と言って帰っていった。少しして彼女は大きななべを手に戻ってきた。ロジャは自分の母親が食事を持ってきたのを見て手を止め彼女の元へと駆け寄っていった。
「みなさんも一度休憩してはいかがですか?」
ロジャのお母さんは俺たちの分まで用意してくれた。先ほどの真剣な表情とは打って変わって少年は歳相応の子供に戻り、母親にちょっかいを出している。
そんな息子の姿を見て母親は感慨深そうにしている。無邪気に話をする少年にそうすごいわね、と相槌を打っているがその目はなんだか悲しそうでもある。
そこへヨーラがやってきた。彼女は腰に不釣合いな剣をぶらさげサイズの合わない鎧をまとっている。
「あーすごいこんなものを作ったのですね」
そう言って一つ手にとって腕を通した。
「まさかヨーラも行くのか?」
「はい、もちろんです私が言い出したのですから。私がこの盾を持って前に立ちます。みなさんは忍び込んで救出に専念してください」
本当はやめさせたいところだが人数が少ない今、断ることができない。
「あ、あの、ちょっといいかしら」
テントの影からローレンが少し顔をのぞかせている。
「せっかくのところ申し訳ないんだけどぉ、もう材料がなくって」