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第186話 戦いの心構え

少年と魔術師の女が手を貸してくれることになった

 次の日、俺はフィリアナとともに再びキンナラたちのもとを訪れた。族長のいたテントには今回は若い人が何人もそろっていた。はじめに前方に座っている族長が口を開く。


「ちょうどそっちに向かおうとしていたんだ、えっと、あ、えーヒロカワ。見てとおり我々はケンタウロスたちの救出に向かうことに決定した」


 腰を下ろしている若者たちは緊張の面持ちでこちらの様子をうかがっている。


「それはよかった、大変ありがたいです。俺のほうからも報告がいくつかあります」


 俺は敵が銃を使うこと、そして銃とはなんなのかを説明した。キンナラたちは顔を見合わせお互いにひそひそと話をしている。つぶれた弾をポケットから取り出し見せた。


「これが銃の弾か、パチンコみたいなものか?」


 族長は一つつまみ上げしげしげと眺めている。こんなものが?と言う声があちこちから聞こえてくる。


「火薬の力を使って弾を飛ばす武器です。花火に使われているって言えばわかりやすいですか?」

「あーああ、爆竹か?子供のおもちゃにそんな威力があるとは、はあーすごいもんだ」


 どうやら火薬自体はあるがそれを戦いに利用しようという考えはないようだ。人数も少なくきっと戦争になっても小規模の争いで新しい武器を作ろうという気にはならないのだろう。作るコストを考えればすでにある弓や魔法で戦ったほうが楽なのだ。


「それでその銃にケンタウロスたちはやられちまったと。射程距離が長いんだったな。じゃああれだな、長弓を持って来い」


 しばらくすると青年が人の背丈ほどもある大きな弓を持ってきた。


「これなら遠くても大丈夫だろう。普段は狩りに使っている弓だ、あまり人を殺めるのには使いたくないがな」

「この作戦はあくまで捕虜の救出です。人を殺す必要はありません、最低限の戦いで逃げる予定です。それと残念ながら馬には乗っていけないと思います」


 族長はうんうんとうなずいた。


「確か大きな音が鳴るんだったな。よし馬は途中に置いて徒歩で行こう。いつ攻撃を開始する?」


 その問いにははっきりと答えることができない。一体いつが良いタイミングなのか俺にもよくわからないのだ。


「すいませんそれはまだ決まっていなくて」

「うーむそうか、ではとりあえずこちらの準備が整い次第そちらへ向かおう」


 俺は礼を言ってその場を後にした。今のところキンナラたちとの連絡は俺がとっている。まるで小さな部隊を指揮しているようだ。自分の言葉一つに彼らの命がかかっている、そう考えるとなんだか突然恐ろしくなってきた。今まで人生で一度だって責任があるような役についたことはなかった。いや、逃げてきたのだ知らず知らずのうちに。


 今度ばかりはきちんと向き合おうと俺は覚悟をきめた。

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