第181話 荒野の風見鶏、キンナラ族 3
キンナラ族の集落で族長と直に話をした
俺たちは少女につれられ集落を見て回ることにした。足元を鶏が悠々と闊歩している。俺は踏まないように足を上げて傍を通り過ぎた。その他にも豚や馬がそこらじゅうを歩いている。
「なんだかにぎやかですね、逃げたりしないのかな?」
「あー行ってしまいますね、特に豚や鶏はえさを探して外へでてしまいます」
沢山いる鶏が一匹や二匹いなくなっても問題はないだろうが馬や牛がいなくなっては大変だろう。牛はテントの影に集まって寝そべっている。こういう言い方は失礼だかまるで動物園のようなにおいがする。いや、それ以上にひどい。そこかしこに糞を落とすのでハエが沢山いるのだ。ここに産まれていたら気にならないのだろうが。
後ろでフィリアナも足元を見ながら慎重に歩いている。
「にぎやかですけどわたくしはもう少し片付けたほうが良いかと……」
「片付けますよー落ちてる糞は肥料にするんです。ここは土地が痩せていますから。それにみんなきちんとしつけられていますから、ビーストテイマーと言いましたっけ?」
ビーストテイマーといえばよくゲームに出てくる猛獣を使って戦う職業だ。俺は怖さ半分少し心を躍らせた。
「俺ちょっと見てみたいんですけど、いいですか?」
彼女は俺のリクエストに特に反応することなくいいですよ、と答えた。
つれて行かれた先には円形に立てられた柵があった。中には健康的な褐色肌の青年と馬がいる。恐ろしくは無いが特に目新しくも無い、まあ現実はこんなものだろう。
青年は手にしている鞭を振るうと大声を出し馬を走らせた。少しスピードが落ちると再び音を鳴らし、馬をぐるぐると走らせる。馬の背中には痛々しい鞭の跡が何本もついている。
ちょっとやりすぎではないだろうか、これではまるで虐待だ。しばらくすると青年は手を止めた。馬も同時に脚を止め青年の様子をうかがっている。すると青年はなぜかくるっと背を向け反対の方向へ歩いていった。そしてさらに不思議なことに馬も彼の後を追うように歩きだしたのだ。
これには隣で一緒に見ているフィリアナも首を傾げている。
「なんだかかわいそうになってしまいますね。でもなぜ彼の後をついて行くんでしょう」
「だよな、俺だったら隙を見せたと思って蹴りを入れるかも」
用が済んだのか青年が柵から出てきた。
「あ、君たちは新しい町から来た人かな、馬を買いに来たのかい?」
俺たちは頼みごとをしにやってきた旅人だと伝えた。よく見ると彼が手にしているのは鞭ではなく紐を木の枝にくくりつけたものだ。
「そうなんだ、まあなにもないけどゆっくりしていってくれよ」
そう言うと彼はどこかへ行ってしまった。