第179話 荒野の風見鶏、キンナラ族 1 (押絵あり)
フィリアナの一声によりケンタウロスたちを助けることになった
俺は早速ヨーラにキンナラ族について聞いてみた。
「彼らはここから北東に向かっていったところにいます。歩いて行くとなると結構時間がかかってしまいますので馬をお貸ししますね。それとごめんなさい私は一緒に行けそうにありません」
できればお互いに面識のある彼女についてきて欲しかったがこの状況では仕方ない。
「馬なら間に合っていますわ、わたくしの背に跨ってください」
フィリアナはそう言ってくれたがやはり気が進まない。馬に乗る技術の話ではなく長時間女の子に密着しているのはどうも慣れないのだ。だがそれを口にしてしまっては余計に下品になってしまう。
俺は勧められたとおりフィリアナの背に跨ってキンナラ族の集落へと出発した。ざっと聞いた話では上半身は人間、下半身は鳥でハーピーよりサテュロスのようなタイプの半獣人らしい。
フィリアナの背から流れていく荒野をじっと眺めた。遠くのほうに二足歩行の小さな恐竜のような動物の群れが見える。交互に顔を上げては地面に落ちているえさを探しているようだ。
ヨーラに言われたとおりなかなか集落は見えてこない。この目印の少ない土地でもしかしたら場所を間違えているかもしれない。俺たちは休み休み走りながらひたすら前に向かって進んだ。
「そうだ、蹄は大丈夫か?こんなに走ってるけど」
「ええ蹄鉄がないのはちょっと変な感じですがすぐに慣れますよ。ほらあそこを見てください何かいますね」
指差す方向を見るとイタチのような動物が穴を掘っていた。前足の指が一本鎌のように鋭く伸びている。
「へえー初めてみたな」
「わたくしもです。ヒロさんのいた世界にはどんな動物がいたのですか?」
「ここの世界と大して変わらないぞ、まあ見たこと無い生き物ばかりだけどな」
するとフィリアナが突然脚を止めた。俺は勢い余って危うく甲冑に鼻をぶつけそうになった。
「あれがヨーラさんの言っていた集落ではありませんか?」
遠くのほうに目を凝らして見ると同じような集落が見え始めた。早速そちらに向きを変え集落へと足を進める。
規模はケンタウロスたちより少し大きめでテントにはいろいろな飾りが吊るされている。質素な造りのケンタウロスと比べキンナラは派手な装飾を好むようだ。
そこにいた住人は確かに上半身が人間で下半身が鳥だ。簡単に説明すると鶏の脚に人間の上半身をくっつけたような姿をしている。腰の辺りから翼が生え、尾は上に持ち上がり長く垂れている。
よそ者の俺たちを皆何事かとじろじろと見つめてくる。どうするべきか迷っていると一人の少女が話かけてきた。