第174話 乾いた音
町の散策をした亜李須川とシャリン、そこでアーグナの父とであった
その後必要な物資を購入したり、町を見て回った後集落へと戻った。もうすっかり日は沈みかけところどころにランタンの明かりが見える。
俺とシャリンの帰りを仲間は心配そうな顔で出迎えた。俺はアーグナの父と会ったこと、それとここにいつ冒険者が襲ってくるかわからないとこを伝えた。
「そうですか、帰ってきたばかりだと思いますけどなんだかみんなの様子がおかしくて」
フィリアナに言われ辺りを見渡すと、言葉のとおりなんだかそわそわと慌しい。アーグナに話を聞こうにも彼が今どこにいるのかわからない。
喧騒の理由はわからないが俺たちはとりあえず夕食をとることにした。するとしばらくして集落の中央に男たちが集まり始めた。皆それぞれ武器を手にしている。
「まさか攻撃をしかけるつもりなのか?」
干し肉を手にしながらシャリンがつぶやいた。もしそうならばすぐに止めなくてはならない、大勢の被害者がでてしまう。俺は話を聞こうと立ち上がったときタッドを先頭に集まっていた男たちが一斉に走り出した。
「ちょ、ちょっと待ってください……!」
俺の声は足音にかき消された。残された女と子供たちは去っていった男たちの後姿を心配そうに見つめている。
「行ってしまいましたね、どうしましょう」
フィリアナも目を細めて後姿を見送っている。今さら追いかけて止めたところで俺の意見など誰も聞いてくれないだろう。
「止めても聞かないだろ俺たちはよそ者なのだから、いつ帰ってきてもいいように手当ての準備をしておこうか?」
日が完全に沈んだ頃、俺たちは焚き火を囲み彼らの帰りを待った。残された人は皆テントの中で物音を立てずじっとしている。集落を異様な静けさが包み込む。
ぼーっと火を眺めていると遠くのほうで乾いた破裂音が聞こえた。それに続き何度もパーンという音が聞こえてきた。シャリンも音のしたほうをじっと眺めている。
それからすぐにまた静けさが戻ってきた。もしかして魔法を使って戦っているのかもしれない。俺は消えた焚き火の横に寝袋を敷きその上に横たわった。空を見上げるとまるでプラネタリウムのようにどこまでも星が広がっている。こちらの世界も星の位置は同じなのだろうか。
そのうちにだんだんと眠くなってきた。まぶたが自然と下りてくる。そのとき地面を叩くようなバラバラの足音が聞こえてきた。ハッと上体を起こすと戦いへと出て行った男たちの姿が見えた。