第171話 開拓者の町 1
集落へと案内されたがあまり歓迎されていないようだ
俺はなぜ彼タッドが嫌われているのかアーグナに聞いてみた。すると彼は眉をひそめて複雑そうな表情を浮かべた。
「うーんそれなんだけど、僕はねこの群れの長の息子なんだ。でも今はわけあっておじさんが長になってるんだけど。だからかな僕のこと好きじゃないみたい」
「そのわけって、お父さん病気とか?」
俺の言葉に彼はさらに気まずい顔をする。
「旅人さんたちに言うことじゃないと思うんだけどね、ここの近くに新しい町ができたって言ったろ?そこの人たちに捕まっちゃって。一週間前ぐらいに父さんと数名が町の人に会いに行ったんだ。だけど交渉は決裂、向こうは先住民の僕たちが邪魔みたい」
初めに会ったとき町に行く冒険者かどうか聞いたのはこのためだったようだ。
「父さんは仲良くやろうとしたけどおじさんはそれに反対、僕もせっかくだから仲良くやりたいけど……。うまくいかないもんだね。みんないつ襲ってくるかって怖がってるんだ」
俺は彼の言葉にうなずいた。若いながら長の息子として精一杯、仲間をまとめているのだろう。そこへ蹄の手入れを済ませたフィリアナが帰ってきた。
「あっ蹄の調子はどうかな、じゃあ僕はこれで」
そう言うと彼はその場を後にした。フィリアナは後姿に礼を言うと何の話をしていたのか俺に聞いた。
「まあ、ひどいそんな横暴なこと。できれば助けてあげたいけど」
彼女に続きニーナやシャリンも神妙な面持ちでうなずいている。すると後ろからわざとらしいため息が聞こえてきた。
「またお助け屋をやるつもり?私たちの本当の目的、忘れて無いわよね?」
セシリアが腕を組みながらフィリアナをじっと睨む。
「え、ええもちろんですわ、でも……」
「でも何?こうしてる間にもダークエルフたちは一歩も二歩も先を行ってるかもしれないのよ。前回は助けたけどこのままぐすぐすしてるなら私だけ先に進むから」
そう言うとセシリアはどこかへ歩いて行ってしまった。確かに彼女の言うとおりこうしている間にすでに取り返しのつかないところまで敵は進んでいるかもしれない。だが目の前で困っている人がいる以上なにもせず出て行くのも良心が痛む。
セシリアの一言で辺りはしんと静まり返ってしまった。フィリアナもなにも言えずにいる。
「とりあえず俺はその新しい町に行ってみるよ。必要な物も手に入るかもしれないからさ。そのときにアーグナのお父さんも見つかるかもしれないから」
今日は休み明日、町へ行ってみることにした。