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第169話 蹄の手入れ

フィリアナの蹄の調子が悪くなったころ、偶然銀髪のケンタウロスに出会った

 俺たちはちょうど良く出会ったケンタウロスの青年に連れられ彼の村へと案内してもらった。実際は村と言うよりは集落のようで、広い地面にテントをいくつも建てて暮らしている。


「ああ言うのを忘れていた、僕はアーグナ、で彼女がヨーラ」


 彼の視線の先には黒味がかった馬体をしたかわいらしい女の子が立っている。光の当たり方によっては紫色にも見えなくない、不思議な毛皮をしている。


 アーグナは彼女に話しかけるとフィリアナを連れて蹄を手入れへと向かった。残った俺たちは荷車を押しつつヨーラの後に続いた。


「こんな辺鄙(へんぴ)な場所にようこそ。ごめんなさいね、おもてなしできなくて」

「いや、休ませてもらえるだけでもありがたいよ」


 しばらくして集落のはずれにある小さなテントへたどり着いた。


「本当にごめんなさいね、でも今はそれどころじゃなくって。こんなことあまり言いたくないけど早くこの場所から立ち去ったほうがいいわ」

「え?なんで?ピヨたち静かにするよ、ほんとだよ」


 隣にいるポリーンもうんうんとうなずいている。すると彼女は悲しそうに首を横に振った。


「いえあなたたちじゃないの。ただ今はあまり村の調子が良くなくって……。お客さんにこんなこと失礼ね、少しの間だけどゆっくりしていってね」


 そう言うと彼女は自分の仲間のところへと戻って行った。みんなが休憩をしている間、俺はフィリアナの様子を見に行くことにした。


 アーグナとヨーラの言葉はなにか引っかかるところがあったが、集落の人たちに特に変わった様子はなく俺のことなど大して気にも留めず自分たちの仕事を黙々とこなしている。辺りを見渡していると立ち並ぶテントの間にフィリアナの姿を発見した。


 彼女は木でできた枠の中に体を入れて、台の上に足を乗せている。


「どうだ?治りそうか?」


 俺の質問に手入れをしている男が答えた。


「いーや悪いね俺たちは鉄はつけないんだ、爪は治せるけど付けなおせないね」


 そう言うと男は蹄と蹄鉄の間に刃を入れ力ずくではがした後、刺さっていた釘を抜いた。それからとんかちと鉄製のヘラを使いまるで彫刻のように蹄を削っていく。さらに大きなペンチのような爪きりを取り出し外側をバシバシと切り始めた。


「痛くないのか?」

「ええ、特に何も感じません」


 確かに爪なので何も感じないのは当然だがなんだか痛そうだ。とりあえず俺は男にまかせその場を後にした。

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