第166話 ネクロマンサーの相談事
当たり前のようにカルベネふられたタルヴエル
俺たちはタルヴェルの存在をなかったことにして町を出た。もう少しゆっくりしていたかったが特にカルベネが嫌がったので仕方なく出発を決めた。
町を出ると再び森の道が続く。でも最近はなんだかこの悪路にも慣れて来た。初めのころは足がぱんぱんに腫れあがってむくみ、ひどい筋肉痛にも襲われたが今はそれほどひどくは無い。でもそれでもやはり野宿は体が痛くなるし、頭も重くなる。
この先大きな町や休めそうな村も無いとタルヴェルが言っていた。するとまたしばらく野宿か、とそんなことを考えていると背後から音もなくローレンが現れた。
「ねぇ……ちょっとぉいいかしら」
「ワッ!あっああ、ローレンか。どうした?」
耳元でぼそりとささやかれ思わず驚いた声をあげてしまった。
「あ、あの、ちょっとアドバイスが欲しいんだけど、そ、その私の魔術なんだけどお、思ったように死体を操れなくて。なんだか動きがぎこちないのよね」
確かに紐のついた人形を動かそうとしてもなかなか上手く行くイメージが思い浮かばない。それに彼女が操っているのは動物の死体だ。自分の体の構造と違うものだから余計に難しいだろう。
「そうだな、生きた動物を観察してみればいいんじゃないか?犬とか猫とか、それでなりきってみて自分がもしこの動物ならどう動くかなって考えてやってみれば?それぞれ得意、不得意あるんだしそのつど使い分けてみるとか」
俺のアドバイスをローレンは真剣な表情で聞いている。
「動物の体に人の脳があれば強いよな。あ、でも毒とか使って殺すのはやめてやれよ」
「そ、それは、反省してるわよ。やりすぎたと思ってる」
彼女はバツが悪そうに目を逸らした。本人もあれはさすがにひどかったと思っているようだ。
「で、でも動物って言ったってどうすればいいの?捕まえてくるの?」
それには返答に困ってしまった。この世界には動物園などという便利なものは無いだろう。いるのは野生動物だが観察できるほど近づくのはちょっと危険だ。
「あ、そうだエレナーゼがいるじゃないか、頭は人間だけど体は猫みたいだぞ」
「うーん、そうねぇ」
するとそこへピヨがやってきた。
「ピヨはね絵を描いてみたらいいと思うの。だってほらピヨの貰った本にも絵が描いてあるでしょ」
そう言ってエレナーゼから貰った本を開いて見せた。結構的を得ているかもしれない。自分で描くとなると必然的に観察する機会が多くなる。
「そ、そうね、やってみるわありがとう」
ローレンは納得したようで列の後ろへ行くとぶつぶつと独り言をつぶやいている。魔法に関しては全然わからないが、少しでも力になれたようでよかったと思った。