第160話 ハンモック作りの名人 ♥
森でユニコーンにそっくりなイッカクヤギを発見した (このエピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)
引き続き平坦な道を歩き、日が落ちてきたころ今日はここまでにすることにした。俺を含めみんなまだ戦いの疲れが取れていないだろう。
ポリーンはピヨのとなりで大きなあくびをしている。ピヨも読み込まれた本を片手にもう寝てしまいそうだ。
「二人とも寝るならちゃんと寝袋で寝ろよ、地面で寝たら体痛くなるぞ」
「う~ん、……寝てない……ん」
俺は寝てしまった二人を寝袋の上に置き毛布をかけた。夜ということはそろそろヴェロニカが起きてくるころだろう。夜の番がいてくれるのはとても頼もしい。いままではシャリンがやってくれていたが彼女も夜行性ではない。
晩御飯を食べているとローレンが一人森の中へ入っていくのが見えた。小さいランタンを手にしているが今の時間の森は特に危険だ。
森の中で彼女は木をまるで品定めをするように見つめている。しばらくして気に入った木が見つかったのかそこで止まると、太い幹を上り始めた。
八本の長い脚と前についた二本の短い脚をつかい器用に上っていく。よく見ると脚の先には鋭い爪がついており、それを引っ掛けるようにして体を持ち上げている。
ちょうど真ん中辺りまで上った後、糸を出したまま隣の木へと飛び移った。二三度それを繰り返すと、今度はそのたゆんだ糸を伝って木の間を行き来し始めた。彼女はじっと見つめていた俺の存在に気づくとびくっと肩を上げた。
「な!あ、あなただったのね、な、なにしているの?」
「いや一人で森に入っていったから大丈夫かなと思って。すごいな何作ってるんだ?」
彼女は恥ずかしそうにしながら作業を続けた。
「え、あの、寝るところを作ろうと思って。ハンモックを作ってるのほ、ほら私大きいから、それにけっこう寝心地がいいのよ、つ、作るのもそ、そんなに難しくないし、ああっ!!」
話しながら作業をしていたせいか糸を渡っている途中で脚を滑らせてしまった。そのまま糸に絡まりひっくり返る。
「い、いや!あっちょっ、い、痛い!」
幾重にも複雑に張られた繊維状の糸が彼女の体に食い込む。もがけばもがくほど糸は食い込み、肉を縛り上げる。
「待ってろ今切るから」
俺は糸を掴み短剣を当てた。だが普通の縄とは違い、全然切れない。
「あっ、あっ……い、いゃっこんな格好は、恥ずかしすぎるわぁ……」
逆さになっているせいか頭に血が上り上気した頬はもっと赤くなっている。
「ちょっと待て動くなって」
「ローレン、アリスガワ大丈夫か?今悲鳴が聞こえたのだが……」
シャリンとフィリアナが剣を片手に現れた。
「あ、あらぁごめんなさいわたくしったら野暮なことをしてしまいましたわ」
「う、うむお楽しみだったようだ」
二人は気まずそうに帰っていった。
「え、ちがっ、ま、待ってくれ」
今度は俺がローレンのような話し方になってしまった。
彼女のほうはというともがいた後、体を一回転させて地面へと落ちた。
「いたたた、もう、余計なことし、しないでよ!」
そう言うと何事もなかったかのように作業へと戻っていった。