第159話 幻獣、ユニコーン?
新しい仲間を加え次に向かうべき町へと進むことにした
俺たちはその後無言で歩き続けた。しばらくして少し疲れたので昼の休憩をとることにした。鞄から取り出した硬いパンにかじりつく。こちらの食事にも慣れてはきたが、やはりあの柔らかくふわふわな食パンや甘い菓子パンが恋しくなる。
気晴らしに近くの森を散策していると、少し開けた岡の上に馬のような動物がいるのを発見した。俺は気づかれないように木の影にそっと隠れ様子をうかがった。
すらりと伸びた脚に白い毛皮、小さな頭にかわいらしい黒い瞳。なにより特徴的なのは頭に生えた長い一本の角だ。もしかしてこれがあの有名なユニコーンという幻獣ではないだろうか?
だがよく観察してみると馬ではないようだ。蹄は二本に割れており、尾もロバのように長い。
「ありゃユニコーンもどきだな」
突然横から現れたカルベネに俺は飛び上がりそうになり、咄嗟に口を押さえた。
「ハァーなんだよびっくりさせるなよ。で、もどきってことはあれは違うのか?」
「そうだあれはイッカクヤギ、イッカクジカとも言うな。ヤギなのか鹿なのかもよくわからんところだけど。あいつらはかわいく見えて結構凶暴なんだ、死人も出てる」
死人という言葉に先ほどの好奇心は消え、体が寒くなってきた。
「縄張り意識が強いんだ。ときに相手を殺すまで追いかけることもあるみたいだぞ。雌は角が短いが子供がいるときは要注意だな。肉は……けっこううまいらしいけど」
「そ、そうかでもあんまり食べたくないな」
俺の目の前にいるのその凶暴な雄だろう。すると木の間から一回り小さな雌のイッカクヤギが現れた。二頭は肩を掻き合ったり近くの草を食べたりのんびりと過ごした後、また森へと帰っていった。
「おとなしそうにみえるけどな」
「そう言うやつが殺されんのよ」
この世界は俺がもといた世界ととてもよく似ている。だがそこに住んでいる人や動物は違う。この感覚が時折、長い夢を見ているような錯覚を覚えさせる。
しばしの休息の後、再びヴェロニカの言っていた町へと向かい出発した。