第14話 出発の準備 2
一緒に旅に出たいとわがままを言うピヨ
俺はピヨのおばあさんの家へたどり着くことができた。小さい二階建ての家で中は広いとは言いがたいが木で作られておりぬくもりを感じる。木製の家具には手作りらしき小物がたくさん飾られている。
「よくきてくれたわね英雄さん」
おばあさんは俺を優しい笑顔で迎え入れ、そんなことないですよと照れる俺にクッキーとお茶をすすめてくれた。
「ね?おいしいでしょ?」
ピヨはおいしそうに好物をほおばっている。俺も一口いただいた。小麦の香りとほのかな甘み、素朴だが飽きの来ないどこかなつかしい味だ。
「ねえおばあちゃん、ピヨねヒロと一緒に冒険に行きたいんだ」
姉の言うことを聞かないピヨもおばあさんの言うことなら聞くかもしれない。
「そう、外の世界は危ないわよ知ってるの?」
「うんだけど外の世界でいろいろ見たいの」
おばあさんは黙ってピヨの話を聞いていた。あわてて止めることも叱ることもしなかった。
そしてゆっくりと口を開いた。
「ピヨ、いいかい人は一生のうちで大きな壁に出会うことが何度かあるの」
ピヨは静かに聞いている。
「その大きな壁をどうするかは自分次第よ」
「壁があるなら超えるしかないでしょ!」
元気な返答におばあさんはまたゆっくりと続けた。
「壁を越えるだけが選択肢じゃないのよ。壁を越えたその先の景色が今より良いものとは限らないし、その壁がどこまで続いているのかもわからない。もしかしたら迂回した先のほうがより良い人生かもしれない。」
「ようするにねあなたには二つの選択肢がある、一つはこの村で毎日一生懸命お仕事をしながら家族や仲間と一緒に立派な女性に成長すること。もう一つは外の世界へ出て日々危険と戦いながら戦士になることよ、学べることも多いけど明日にでも命を落とすかもしれない……」
ピヨはおばあさんのもとへ近寄りぎゅっと抱きしめた。おばあさんも何も言わず抱きしめ返す。
「おばあちゃん、わたし戦士になるよ」
ピヨは耳元でそう小さくつぶやいた。