第154話 嵐の後
崖まで追い詰めたキーガにピヨが止めを差した
改めて見渡すと村はひどい状態だった。奇襲を受けたせいか怪我人が多く、建物も扉が力任せに壊されてしまっている。戻った俺たちのもとにポリーンが駆け寄ってきた。
「大丈夫でしたか?どうなりました?あの人は?」
「悪者はピヨがやっつけたよ!」
そう言ってピヨはにっこりと笑った。それを見てポリーンも安堵の笑みを浮かべる。
「結構ひどいな、被害はどれくらいだ?」
俺の言葉にポリーンはキリッと表情を引き締めた。
「捕まっていた人たちは無事でした、けど戦いに参加した人はほとんど怪我を負っています。中には命を落とした人もいます……」
それを聞いて一番初めに出会ったダークハーピーの男を思い出した。きっとあの小屋のどれかに彼の家族も捕まっていたのだろう。
勝負には勝った、しかし誰一人としてこの結果を喜ぶ者はいない。一人の傲慢な男が引き起こしたあまりにも無意味な戦い。長い時間をかけて築き上げてきた種族間の友好関係はあっさりと塵に帰った。
「仕方ない、とりあえず散らかったものを片付けよう。それから家も直さなくっちゃな、なるべく早く帰れるように」
重たい足を動かし作業に取り掛かろうとする俺たちを引き止める声が背後から聞こえた。振り返るとそこにはダークハーピーの長であるダルコーが部下とともに立っていた。
「引き止めてすまない、お前たちに礼を言いたくてな。なにかくれてやりたいが、あいにく村はこのざまだ。だがこのまま貸しをつくっておくわけにもいかないのでな」
「いえとんでもないですよ、えっとそうだな……」
断ろうとしたときふとダークエルフについて思い出した。もしかして彼らならなにか知っているかもしれない。
「あのダークエルフはご存知ですか?俺たちずっとその後を追ってて、もしよかったら聞きたいことがあるのですが」
「なんだ言ってみろ」
俺が手紙やもう一つの世界について聞こうとしたそのとき、なぜかあのダークハーピーの女が割り込んできた。
「あ~いやいやこの人の目的は女を集めて自分だけのハーレムを作ることなんですよ、見てください、ね?仲間に女ばかりでしょ?」
突然のことにダルコーも俺も、そして俺の仲間たちも困惑を隠せない。
「なに言ってんだよ俺はそんなこと」
そう言いかけたとき彼女の長い尾で足をぶたれた。
「こいつは、あっ、この方は強くて綺麗な女を集めて自分だけの国を作ろうとしているんですよ。次の目標はダークエルフだそうですが、きっとこの村からも女を一人よこせと言ってきます」
ダークハーピーの長とその同胞たちは顔を見合わせ眉をひそめる。いきなり英雄から奴隷商人に転落だ。だが彼女が何の理由もなくこのような馬鹿げたことをするはずがない。とりあえず俺は彼女のペースに乗ることにした。
「ええ実はそうなんですよ……俺はハーレム王になるぞぉ、なんてね……」
「いや、そうだな誰が欲しいんだ、お気に召した人がいればいいが」
背後からものすごい寒気がする。
「そういうわけですので私がその女に立候補いたします」
これには静かだった後ろからもえっ?!という声があがった。
「ああそうか、冒険者いやハーレム王よ、それでいいか?」
ダルコーは疲れた顔をし、もうなんでもいいといった様子だ。
「はい、もちろんです」
そして俺もこう答えるしか道はなかった。