第151話 反撃の牙 2
フラワーハーピーの村の人々が参戦しようとするもイヴァンが止めにはいった
両者の間に立ち塞がるイヴァンのもとへキーガが近づいていく。
「この反逆者め、お前の親族全員手足をもいで豚のえさにしてやろう。もちろんお前は最後だ」
ガチャガチャと重たい装備を鳴らして歩み寄ってくる相手にイヴァンは少し身を引いている。すぐにでも逃げだしたいが根性を見せようとしているのだろう。そんな姿に感化されたのか兵士の女が一人が彼の前に出た。
またしてもつまらぬ妨害にキーガは苛立ちを見せる。
「なんだ正義気取りの女がまた一人増えたのか……身の程を知らない雑魚が寄り集まって反吐が出そうだ」
彼女は顔色を変えず静かに武器を構えた。
「女か男かなんて関係ない、ただ自分の使命を果たすだけだ。私は命をかけて村人を守る。たとえあなたが私たちの長だとしても」
すると彼女に続き先ほどイヴァンに声をかけた男が被っていた兜を脱いだ。しわの目立つ容貌からおそらく彼はこの軍を束ねる上官なのだろう。
「キーガ様もうこんなことは終わりにしましょう、この青年の言うとおりこのままでは私たちに明日は無い。いずれ滅びてしまう。村の者は皆、恐れを抱いております」
「そうかお前までそう言うか、残念だ」
キーガはためらうことなく年老いた兵士に刃を向ける。彼は兜を持ったまま諦めたようにそっと目を閉じた。近くで見ていたほかの兵士たちはその無慈悲な制裁に体をこわばらせる。
「おい、待てよ、まだ私との決着がついてないぞ」
聞き覚えのある声にキーガは足を止め振り返る。そこには先ほど倒れたダークハーピーの女が立っていた。
「また邪魔が入る、クズどもの悪あがきにはもう疲れた、どいつもこいつも全く気にいらんなぁ」
「その言葉、そっくりそのまま返すぜ裸の大将。私も気にいらねえなぁ、人の嫌がる顔見てマスかいてるような野郎はよぉ」
彼は今度こそ止めを刺そうと一気に距離を縮めそのまま刃を横に引く。それを彼女は煙と共にサッと避けた。女はキーガからの攻撃を後ろに下がりながらすんでのところでかわしていく。
隣ではフィリアナとシャリンが緊張した面持ちで戦いを見守っている。
避け続けていたと思った次の瞬間、女はすばやくキーガの上腕に掴み掛かった。彼はわざわざ自分の懐に飛び込んできたとにやける。しかしその余裕はつかの間、突然ダークハーピー特有の黒い翼から紫色の炎が立ち上がった。
「な、なんだこれは、ぐっ…!」
ごうごうと音を立てキーガの茶色い羽が炎に包まれ燃えていく。これはさすがにこたえたのか歯を食いしばり苦悶の表情を浮かべている。いくら肉体が強靭でも火には勝てないだろう。
だがそんな中でも彼は負けじと彼女を掴み返すと横に放り投げた。力を使い果たしたのか女はぐったりとしている。
「はあ、はあ、くそっよくもやってくれたな、だがこんな小細工いつまでも続くと思うなよ」
そう言ってはいるが翼についていた大きな刃は熱で歪み、先ほど受けた傷が効いてきたのかわき腹を抑え息を荒くしている。
「さあ、次はわたくしたちの番ですね」
隣で静観していたフィリアナは剣を抜き彼の元へと駆け出した。