第150話 反撃の牙 1
キーガの前に無謀にもピヨが立ち塞がったが、間一髪のところで再びダークハーピーの女に助けられた
突進するキーガに対しダークハーピーの女は紫色の炎を放ちぶつけた。しかし怯むことなく半ば強引に炎を翼で叩き落としながら距離を詰める。そして彼女に対して容赦なく両翼の刃を振り下ろした。女はすんでのところで身を翻し煙と共に後ろに下がる。
俺はキーガが気を取られている間にピヨの元へと駆け寄った。ピヨは起き上がるとこちらに向かって走って来てぎゅっと抱きついた。
「大丈夫か?なんであんなことしたんだよ」
「う、うええ、だってあのおじさんしか倒せないと思ったから~」
鼻水を垂らしているピヨの髪に指を通して見たが特に大きな怪我は無いようだ。隣では心配そうにポリーンが見つめている。
「ああ、よかった突然行ってしまうから」
フィリアナたちも駆けつけ胸をなでおろしている。
「ほんとよもう、でも全くの無謀ってわけでもなかったみたいね」
ニーナの言うとおりピヨにもただ突っ走って行ったわけではなかったようだ。するとどこからともなくエレナーゼが足元に姿を現した。
「感動中申し訳ないんだけどちょっと大変よ、フラワーハーピーの村の人たちがこちらに向かってきてるわ」
「え?なんだって?!」
彼女の話によると自分たちも戦おうと奮い立ったらしい。しかし彼らはどうみても戦いには向いていない。今ここでかち合ってしまえば結果は火を見るよりあきらかだ。
「早く行って止めないと」
「あっもう遅かったみたい」
エレナーゼの視線の先には村長を筆頭に、農耕具や古びた装備を身につけた村人が大勢立っている。ちょうどそのときダークハーピーの女が強烈な一撃をみぞおちに食らい地面に倒れこんだ。
フラワーハーピーたちの到着を部下の一人が伝えに行く。
「ハッ口ほどにも無い、なに?フラワーハーピーだと?面倒ださっさと全員殺せ」
上司の指示にハンターハーピーの兵士たちは一斉に攻撃を開始する。
「なにやってるんですか早く逃げてください!」
俺は遠くから精一杯叫んだ。
「いや私たちは引かないぞ、家族は自分たちの手で守る!」
村長はそう言うと雄たけびをあげ他の村人とともに走り出した。そこへ空から一人のハンターハーピーの青年が降りてきた。見知った顔に村人たちは足を止める。
「イヴァンじゃないか?なにをしているんだこんなところで、危ないからどきなさい」
「みなさんお願いします止めてください!」
兵士たちは何事だというような様子で立ち止まっている。どうやら村に度々訪れていた青年はイヴァンと言うようだ。
「こんなのは止めにするんだ俺たちは同じ仲間のはずだろ!」
「ここは危険だ村へ戻りなさい」
彼の元へ兵士の一人が近寄り退くよう促す。しかしイヴァンはそれを振り払った。
「ふざけるな!なんでだよおかしいと思わないのかこんなの、上官が命令したら家族でも平気で殺すのかよ!体ばかり鍛えて頭の中は空っぽなんだな、俺はここをどかない。遅かれ早かれこのままじゃ俺たちは滅びる」
兵士たちは彼の言葉に互いに顔を見合わせる。そこへ痺れを切らしたキーガが近づいてきた。