第146話 鳥の王、ハンターハーピー族 2
小屋に閉じ込められているダークハーピーたちを助けるようお願いされた亜李須川とピヨとポリーン
ポリーンは壁の一部に歯を立てバリバリとはがし始めた。
「おい、なにやってるんだよそんなことしたら歯が欠けちゃうだろ」
当の本人はけろっとした顔をしている。
「あ、私の歯はみなさんと違って硬いので大丈夫なんです、ほら」
そう言って歯を見せて笑った。彼女の前歯はまるでふぐのようにブレード状に繋がっている。
「よく木や土をかじって巣を作るんです、ここちょっと腐ってるので穴を開けてみますね」
そう言うとまた木の壁をはがす作業に戻って行った。だがもし人を助け出せたとしてもそのときにばれてしまうかもしれない。幸いにも木をはがす音は辺りの喧騒にかき消されているようだ。
俺は警戒するため辺りを確認した。ふと足元を見ると枯れ枝が落ちている。
「なあピヨ、この木の枝に火をつけられるか?」
「やってみる!」
俺が枝を差し出すとピヨはうーんとうなりだした。
「小さくだぞ、爆発させないようにな」
「う、うん小さくね、むう、ぐぐっ」
すると枝の先端についていた枯葉が少しずつ燃え始めた。
「よしよし、もういいぞ」
俺は焚き火を始めるときのようにフーと息を吹きかけ火を大きくした。
「あの穴が開きました、ちょっと小さいですけど」
ポリーンは汗をぬぐいながら壁に開いた穴を指差した。彼女の言うとおり子供一人が通れるほどの大きさしかない。俺は中を覗き込んだ。
男の言葉通り家の中には何人もの女と子供が肩を寄せ合い座っている。
「あの助けに来ました、一人ずつ出てきてください」
俺の声に皆一斉に駆け寄ってきて子供を穴に押し込めた。火の点いた枝をいったんピヨに渡し、子供たちを受け取る。
俺は救助作業をポリーンとピヨにまかせ火の点いた枝を家の隣の大きな木に放った。枝は密集した葉に引っかかりすぐに火を大きくした。門番たちは背後で燃えている木に気を取られている。
「さあ、速くこの先にあるフラワーハーピーの村へ行ってください」
救助された人たちは子供を連れ走り出した。その間を縫って少女が俺の元へ駆け寄ってきた。
「あの私の母がいないんですたぶん違うところに閉じ込められてて、お願いします助けてください」
少女にあとで助けるから先に避難するように伝えたが彼女は首を横に振った。どうしても母親の無事を自分で確認したいようだ。