第145話 鳥の王、ハンターハーピー族 1
すでにハンターハーピーによる襲撃が始まっていたため、手分けして負傷者を助けることにした
俺はピヨとポリーンを連れ木々の後ろに隠れつつ負傷している人を探した。騒然としている村の中をハンターハーピーの兵士たちが歩いている。
兵士たちは鉄の鎧で体を覆い、翼には鋭利なブレードをつけている。羽の色はイヴァンと同じような茶色や黒で、なんといってもがたいの良さに目がいく。彼も背が高くがっしりとしていたがどちらかというとそのまま自然に育ったという印象だった。対して戦士たちはまるで鍛え上げられたボディビルダーのようだ。
足の爪は大きく湾曲し、ダガーのように鋭い。そこに上からさらに鉄の爪で武装している。もし見つかったのなら逃げる暇も無く殺されてしまうだろう。ピヨは顔をこわばらせて俺の服の裾をぎゅっとつかんだ。
周囲を見渡すと木の根元にダークハーピーの男が倒れているのを見つけた。俺は辺りを警戒し、男に近づいた。
「あの、大丈夫ですか?今助けますから」
だが男の姿を見て俺はぐっと息を呑んだ。彼は腹部を大きく切り裂かれてしまっていた。傷を押さえている手は振るえ、冷たい汗で濡れた顔面は蒼白だ。流れ出た血が足元を水溜りのように地面を赤黒く染めている。
「体を起こせますか?俺につかまって……」
俺が体を寄せると耳元で男はかすかに唇を動かした。
「やつらは女と子供を小屋にと、閉じ込めた……助けてやってくれないか?頼む……」
隙間風のようにかすれ弱々しい声だ。それを伝えると男は自分から腕を放し、木に寄りかかった。
「わかりました、助けてきますから待っててくださいね」
俺がそう言うと彼は目を細め少し笑い、そのまま眠りについた。悲惨な現状に二人はじっと体をこわばらせている。
「行こう、この人の言ってた小屋を見つけよう」
俺は再び見つからないよう様子を伺いながらその監禁しているという小屋を探した。しばらく物陰に隠れながら家の窓を覗き込んだりしていると、ひときわ大きな家の前にハンターハーピーの兵士が二人立っているのを発見した。
おそらくそこに村の人を監禁しているのだろうがご丁寧に表と裏口両方に鎖で錠がかけられている。前に立っている門番をどうにかするだけではなく鎖を切る方法も考えなくてはならない。
俺は裏口に立ってどこか隙間がないか探った。木でできた窓を割ってもよいが見たところ丈夫で俺が短剣を使って壊すのにかなり時間がかかるだろう。
俺が家の回りをうろうろしていると突然ポリーンが壁の一部に噛み付き始めた。