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第142話 気難しい二人 2

セシリアとローレンはフラワーハーピーとの問題解決より先に進むべきだと意見した

 出て行ってしまった二人を追いかけようとすると廊下から話し声が聞こえてきた。


「そ、そんなこと言ったって、あ、あなただってあのとき勝手な行動とったせいでダークエルフと戦うことになったじゃない!」

「私はさっさと任務を終わらせて帰りたかったの」


 どうやら部屋を出た先でセシリアとローレンは言い争いをしているようだ。


「じ、じゃあさっさと帰ればい、いいじゃないこれ以上危険な目に合うのはごめんよ!」

「言われなくてもそうするわ、はぁ、口うるさいばかりで役立たずの蜘蛛女と一緒にいるなら本物の蜘蛛のほうがましよ」


 そう言うとセシリアは自分の部屋へと戻ってしまった。残されたローレンはぶつくさ文句を言いながら建物の外へと出て行った。


 俺はみんなのほうを振り返った。各自しょうがないな、という表情を浮かべている。仕方が無いので俺は外へ出てローレンの後を追った。


 彼女は家の裏手で一人、じっと座っていた。


「えっと、なあローレン」


 俺が話しかけると彼女はバッとこちらを振り返った。


「なによ、(なぐさ)めに来たわけ?怖いのはみ、みんな同じだから頑張ろうなんてい、言わないでよね。人それぞれ感じ方はち、違うんでしょ?私はもう限界よ、つ、常に命の危機なのも、野宿も虫だらけな上にお風呂にもろくに入れないなんて」


 一体このような場合どうしたらよいのだろうか、自己責任でついてきたのだから嫌なら帰ればいいと言ってしまえば楽だろう。彼女を安全に家まで送り届ける必要も無ければ、ここで無理に引き止める必要もない。


 だが彼女の求めている答えは違う、本当は引き止めて欲しいのだ。それはわかるが下手な言い方をすればもっと怒らせてしまうに違いない。


「な、なんなのわ、私は一人になりたいの、ああ、大勢でいるのって、ストレスだわ」

「まあ確かにそうだよな、環境は最悪だし常に冷や汗ばかりかいてるよ」


 同情は止めてよねと言い出しそうな彼女を遮っておれは話を続けた。


「正直なところ俺のもといた世界では毎日風呂に入ってもちろん虫なんてこんないなかったし、戦いとなんて無縁だったよ。でも、こんなに沢山友達がいたことは今まで無かったんだ」


 ローレンは口をつぐんで俺の話を聞いている。


「別にチーム全員と仲良くできるとは思えない、だってみんなそれぞれ違うんだから。だけど俺とは、俺とはせめて友達でいてくれないかな、その、もしよければだけど」


 俺の言葉にローレンは目を丸くしぱちぱちと数回瞬きをした。


「え、えあ、そ、そうねまあ、いいわよ」


 予想外の答えだったというように彼女は戸惑っている。


「みんなとうまくやろうとするから疲れちゃうんだよな、自分のペースでいいと思うぞ。話したくなかったら別に無理に話しかけたり話題を合わせる必要も無い。ちょっと無口でミステアスなキャラがいてもいいんじゃないか、こんなに人いるんだし」


 ローレンは何か言いたそうに口を開いたり閉じたりしている。


「まあとりあえずまた気が向いたら戻ってきてくれよ、みんなには適当に言っておくから。あ、なるべく日が落ちる前がいいかな」


 俺は照れ隠しに少し笑ってその場を離れた。

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