第140話 夜に鬼ごっこ
ダークハーピーの女に出会うことができたがなかなか話を聞いてもらうことができなかった
女は俺たちに自分を暗闇の中で捕まえることができたのなら質問に答えると言ってきた。
「期限は夜明け、いやもう少し前だ。お前らで協力してもいい、けど触れるのは小僧ひとりだけだ」
そういうと彼女は森の中に消えていった。
「アリスガワどうする、確かあいつは暗い中でも目がみえるのだろ。私も夜に強いがそこまでではない」
期限は夜明けより前だとするともうあまり時間は無い。おそらく森を歩きながらゆっくりと自分の家に帰るつもりだろう。
ダークハーピーがどれほど見えているのかわからないが彼女は俺たちが全く見えていないと思っているに違いない。視覚において自分のほうが有利だと思っている、すなわちそれほどそれに頼っているということだ。
それに俺の予測だと彼女たちはわずかな明かりにすごく敏感だ。だから森の中でも小さな焚き火の光を見つけることができたのだ。
「よし、シャリンは俺と一緒に、ニーナとフィリアナは明かりをもってそれぞれ左右から歩いていってくれ」
ニーナは肩をすくめると俺の提案どおり森の中へと消えていった。
「気をつけてくださいね」
そう言ってフィリアナもニーナと反対の方向から歩き出した。
俺は明かりを持たずにシャリンとともに女の後を追った。
「なるべく音を立てないように姿勢を低くしていこう。俺は全然見えないから案内を頼む」
「うむ、まかせろ」
だが後ろについていこうとしても少し離れてしまうと姿が見えなくなってしまう。
「あの……もしよかったら手握っててもいいか?」
「え、あ、そうだなお前は全く見えないんだったな」
俺はシャリンの手をそっと握った。手の甲は柔らかい毛に覆われているが手のひらは滑らないよう皮膚のようになっている。
しばらく腰を落とし草むらに隠れながら静かに進んだ。
「おいあれを見ろ」
シャリンの声に顔を上げると暗闇のなかにぽつりとオレンジ色の明かりが浮かんでいる。
「どうやらタバコを吸っているみたいだな。今しかチャンスはない、私もあの明かりが消えては場所の確認がしづらくなってしまう」
なんとも余裕なことだが彼女はときおり辺りを見渡しているようで、タバコの明かりが左右に揺れている。
すると吸い終わったのか明かりが消えてしまった。もしかしてこちらの存在に気づいたのだろうか。
「あっアリスガワ明かりが消えてしまったぞ、いや大丈夫だまた吸い始めた」
俺たちは二人でそっと胸をなでおろした。しばらくすると明かりが横を向いたまま止まった。きっとニーナかフィリアナの持っているランタンの明かりを発見したのだろう。
俺はシャリンの手を離し彼女へとそっと近寄り暗闇に向かって抱きついた。
「あああああ!!」
女はものすごい声を上げ飛び上がった。
「はあ、はあ、なんだお前かよ、チッ」
「約束どおり俺が捕まえました、質問に答えてくれますねよ?」
彼女はしょうがねえなと言ってまた舌打ちをした。