第138話 危ない橋 1
ハンターハーピーの青年からダークハーピーが関わっていることを聞いた
彼の話によるとダークハーピーは求めどおりに女を一人差し出したそうだ。以前出会った感じからするとどうもおとなしく従うようには見えない。
「背は高くて髪の赤い細身の女だ。遠くからしか見てないから細かいところはわからないけど、なんだか不気味だよ」
「そうかありがとう、俺たちはこの女について調べる必要がありそうだな」
その夜俺は再びダークハーピーに会ってみることにした。正確には前に助けてくれた気の強そうな女にもう一度会いたい。
「アリスガワ正気か?もう一度行っても会える保障などないのだぞ」
シャリンをはじめ俺の提案を聞いた全員が苦い顔をしている。
「シャリンの言うとおりそう簡単に会えるとは思えない。それどころか以前のチンピラみたいな連中にからまれる危険もある。だから俺一人で行く」
俺の言葉にシャリンは勢い良く椅子から立ち上がった。
「な、なにを言っているんだ、それこそ自殺行為だぞ!私も行く」
「いやでもあいつらは女の子がいると寄ってくるかもしれないし」
フィリアナが短くため息をついた。
「関係ありませんわ、ヒロさん一人でも今度はお金をせびってくるに違いないです」
「そうよ、それにあんな雑魚べつにどーってことないわ」
ニーナがフンと鼻を鳴らす。そういうわけで俺はシャリンとフィリアナ、ニーナを連れて夜の森へと出た。
開けた道ならば月明かりでわずかに見渡すことができるが、一歩森へ入るとどれだけ目が慣れても足元を見るので精一杯だ。
俺たちはランタンのわずかな明かりを頼りにダークハーピーと出会った場所まで戻ってきた。
「焚き火の跡があるここで間違いないな」
「で、どうすんのよ?」
俺は周囲に落ちていた枝を集めもう一度その場で火を起こした。
「まさかこれで見つけてもらうつもり?ハァー大声で叫んでたほうがまだ成功する気がするわ」
ニーナがわざとらしく大きなため息をつく。
「まあ試しにって感じかな、少し待ってこなかったら違う方法考えるよ」
彼女は呆れたような表情を浮かべ、近くの丸太に腰掛けた。
「せめてなにか焼くものでも持ってくればよかったわ」
その後しばらく俺とシャリンは火の近くでダークハーピーの女を待った。他の二人は夜遅いせいか眠ってしまった。
「なあアリスガワお前がもといた世界にはその、本当に私たちのような存在は全くいないのか」
シャリンがじっと火を見つめながら話し始めた。
「まあ、そうだねもしかしたらどこかにいるのかもしれないけど俺はみたことなかったな」
「じゃあ……変に思うか、私やみんなのこと……。いや、いいんだなんでもない忘れてくれ」
彼女は顔を隠すようにそっぽを向いてしまった。
「うーんそりゃ不思議なんだろうけど、初めて会ったのがピヨだったからなーなんかそんな考えすっ飛んじゃったよ」
俺が笑うとシャリンも少し微笑んだように見えた。するとシャリンは突然耳をピンと立てその場から立ち上がった。明かりの届かない暗がりをじっと見つめている。
「こんな場所でデートなんて関心しねえなぁ、言ったよなここで焚き火はするなって」
闇の中からタバコを口にくわえ、ダークハーピーの女がゆらりと姿を現した。