第137話 愛と絆
失敗したことを負い目に感じていたピヨをニーナが元気づけた
次の日朝早くからニーナとピヨは外へ出て特訓をしていた。ニーナの叱咤する声が聞こえる。彼女の動きに翻弄されピヨは全然ついていけていない。
「なーんか大変なことになっちゃったねぇー」
カルベネは他人事のように朝からワインを飲んでいる。
「そーいやさっき例の彼が来てたよ」
「え?なんだって早く言えよ!」
俺は慌ててフィリアナを呼び外へ出た。
彼はまるで俺たちを待っていたかのようにじっとそこにたたずんでいた。
「なあ、そろそろ協力してくれてもいいんじゃないか?」
「俺にできることはないと言っただろ」
そう言うと彼は逃げるようにその場を後にしようとした。
「あなたは一人逃げ出したという騒ぎを聞きつけて、だから様子を見に来たんでしょう?それがリリーさんかもしれないから」
フィリアナの言葉に彼は足を止めた。
「彼女がなぜ帰ってきたのかわかりますか?逃げ出したのが見つかるかもしれない、そんな恐怖のなか傷ついた体で夜の森を飛んできた理由がわかりますか?夜の森にはダークハーピーもいます、知ってますでしょ?そんな恐怖の中彼女が帰ってきた理由、それはわずかに希望があったからです」
彼は背を向けたままその場から動かない。
「絶望の中でもわずかに光があったから、その希望に命をかけてもいいと思ったから!死を覚悟して帰ってきたんですよ!その希望はあなたなんじゃないですか?!」
フィリアナの声が静かな朝の村に響き渡る。
「俺……俺が希望だって?そんなの、俺はなにもできない雑魚だ。彼女になんてとてもじゃないがつり合わない」
「つり合うとか合わないとなそんな話はしてはいません。あなたは彼女を愛しているんでしょう?それともなんですか他の男に汚されたからもう興味が薄れましたか?」
ここでやっと彼が振り返った。歯を食いしばり苦悶の表情を浮かべている。
「そんなことあるわけないだろう!俺は自分が許せないんだ!なんでこんな、情けなさ過ぎる、笑ってくれよ俺は……彼には勝てないんだ」
「ええ、情け無いですね、彼女は戦ったのにあなたは言い訳をして逃げるのですか?」
フィリアナは泣きそうな彼に近寄った。
「なにも武力だけが戦いではありません。わたくしたちには協力が必要なのです。あなたたちの家族や仲間を救うためにも」
彼はしばらく考え込んだ後再び口を開いた。
「あいつは最近ダークハーピーにまで手を出し始めた。ありえない話だと思うがやつらは女を一人差し出したんだ」