第135話 わずかな勇気 2
捕らわれていた村長の娘が帰ってきた
リリーはぐっと息を呑むと語り始めた。
「お願い助けて、私以外にも捕まっている人がいるの」
「あなただけ逃げてきたのですか?」
フィリアナの言葉に彼女は軽くうなずいた。
「夜こっそり逃げ出したの窓が開いていたから。きっとお手伝いさんの一人が開けてくれていたのね。真っ暗な中夢中で飛んだわ」
おそらく彼女が傷だらけだったのは暗い中森を飛んできたからだろう。木にぶつかったり転んだりしたため泥だらけになってしまったのだ。
だが彼女の首や肩にあるあざは、木の枝によってできたものとは思えない。
「そのハンターハーピーに何をされたのですか?」
「彼の名前はキーガ、つい最近新しく村長になったやつよ。あいつは私たちを人質にとってこの村を支配しようとしているの」
ここで彼女は声を詰まらせ唇をかみ締めた。
「でもそれはただの表向きの理由、ほ、本当は、あいつは、女が好きなだけ。自分のいいようにしたいだけ。最低だわ、ゴミよ!抵抗したら殴られたわ。それどころか他の子にまで手を出して……あいつ笑ってたのよわた、し、を見て」
彼女が歯ぎしりをする音が聞こえる。
「でも私あいつの顔を蹴飛ばしてやったわ、ざまあみなさいよ……」
そういうと彼女はシーツに顔を埋め泣き出した。
フィリアナはあまりの怒りに体を震わせいてる。
「なんていうことなの、絶対そのクソ男の首を取ってカラスに食わせてやるわ!」
シャリンはそっとフィリアナの肩に手を置いた。
「フィリアナ落ち着け、今の言葉からするとハンターハーピーのなかでも全員が敵ではないということがわかったな」
シャリンの言うとおり彼女を逃がしたのもまた同じハンターハーピーなのだ。シャリンは冷静に言葉を続けた。
「それでそいつはどんなやつなんだ?なぜそんなやつが村長になっている?」
「でかいわ、他の人と比べても一回りも二回りも強いの。力では絶対に勝てない、だからみんな怖がってた。それにそいつの父親が村長だったから、病気で亡くなったんだけど」
肉を売りに来ていた青年と同じように皆怯えて逆らえないのだ。
とりあえず俺たちはすぐに彼女の部屋を出た。その後奥さんにお礼を言って家にを後にした。