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第134話 わずかな勇気 1

ハンターハーピーの青年に出会うも何も話してはくれなかった

 俺とフィリアナは飛び去った彼の後姿を見送った。


「やっぱりだめですね、助けようにもこれでは。歯がゆいですね」


 彼女の言うとおりだ。このまま待っていても(らち)が明かない。仕方が無いのだろう、彼にも家族があり生活がある。もし逆らったことがばれ村を追い出されたのならたまったものではない。


「仕方が無い、もうそろそろこの村を出よう。つらいけど俺たちにも旅がある」


 俺の言葉に彼女は黙ってうなずいた。


 次の日仕事をしようと外に出るとなにやら村が騒がしい。村長夫妻をはじめいろんな人の声が聞こえる。


 近くに寄って見ると奥さんに抱かれ一人の女の子がふらふらと歩いていた。服は布を一枚まとっただけのような簡素なもので下着をつけているも怪しい。


 顔は青白く美しい羽はもげ、病的に痩せ細っている。また全身傷だらけでところどころ土にまみれている。


「どうしたんですか?彼女は……」

「私たちの娘だ」


 村長は声を震わせて答えた。まさかハンターハーピーは彼女を解放したのだろうか。


 痩せ細った女の子は母親に連れられ家へと入っていった。俺はこの出来事をフィリアナたちに伝えた。


「本当ですか?それは良かったです。どうしたのか彼女に話をきくべきです。もしかしたら他にも捕まっている方がいるかもしれませんから」

「うむ、だが彼女が話してくれるだろうか」


 シャリンの言うとおり心身ともにショックを受けている女の子がいまさら話をしてくれるとは思えない。


「ですがやってみる価値はあります。彼女が嫌がればすぐに身を引きましょう」


 俺たちはだめもとで村長の家を訪ねた。奥さんは不安そうな表情を浮かべたが一応彼女の部屋の前ので通してくれた。


「リリー、お客さんが来ているの。あなたに話を聞きたいって」


 扉をノックしたが返事は返ってこなかった。奥さんは静かに首を横に振った。


 俺たちが去ろうとしたそのとき扉の向こうから入ってちょうだい、という小さな声が聞こえた。そっと扉を開けるとそこにはベッドに横たわったリリーがいた。顔色は少しよくなったがいまだ怯えた顔をしている。


 花柄のシーツからのぞく肌にはあざや引っ掻かれたような傷跡が見えている。


「俺は亜李須川(ありすがわ)、でこっちがフィリアナとシャリンだ。俺たちは旅をしていてたまたまここに立ち寄ったんだけど。もしかして力になれるかと思って、もし嫌ならなにも話さなくて大丈夫だから」


 するとリリーはこちらを涙の溜まった目でキッと見つめた。


「いえ、平気よ私はこのために帰ってきたのだから」


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