第131話 手折られた花 1
フラワーハーピーの村へとたどり着いたが、人がおらず異様な雰囲気だった
フィリアナの鶴の一声で俺たちは空いた家に泊めてもらうことになった。ベッドで眠れるのはうれしいがそのハンターハーピーという種族がいつ来るのかわからない今、手放しに喜んでいいのかわからない。
「……はぁ、で?どうするつもりなの、まさか手助けするなんて言わないでしょうね」
セシリアはベッドに腰掛け、腕を組みフィリアナを睨みつける。
「いえそうとは言いませんが泊めてもらう代わりにわたくしにできることをやってあげるつもりです」
「あっそ勝手にしてよね」
そう言うとセシリアは部屋を後にした。
とりあえず俺たちは先ほどの男に何が起こっているのか聞きに行くことにした。家から出ると彼は外で工具の片付けをしていた。
「あのすいません、もしよければ俺たちになにが起こっているのか教えてくれませんか?」
「わたくしたちにできることがあればおっしゃってください」
俺たちの声に男はゆっくりと振り返った。
「ああ、そうだなじゃあ着いてきてくれ」
すると男は俺たちを自分の家の地下へと案内した。
そこには薄明かりの中、数名の女の子が固まって座っていた。皆一様に疲れた顔をしている。
「村中こうさ、みんな自分の家の娘を隠しているんだ。そこにいるのは近所の子たちだ。これでも私は村長だからねどうにかしなきゃいけないのはわかっているんだが……このざまさ」
この村の雰囲気からして戦いに慣れている人がいないのだろう。だからこうして隠すほか手段がないといった様子だ。
すると奥から少し年老いた女の人がでてきた。彼女は村長の妻らしい。
「まあお客さんね、ごめんなさいね今こんな状況で。でもあなたたち大丈夫なの?特にあなた」
そう言って彼女はピヨのほうを見た。言われた当人はきょとんとしている。
「あなただって私たちと同じなんだから気をつけないと。あいつは外部の人だからとかそんなの気にしないわよ」
「同じって、ピヨはフラワーハーピーだったのか?」
「え?ピヨ、フラワーハーピーなの?」
忠告された本人が一番驚いている。確かにこの村にいるハーピーはピヨやピヨの家族と同じようにきれいな色の羽をしている。
ピヨのとぼけ具合に暗い顔をしていた女の子たちはクスクスと笑っている。
「そのハンターハーピーについて詳しく教えていただけませんか?」
フィリアナの言葉に夫妻は顔をこわばらせる。
「彼らとは良い関係だったんだ。うちは農家が多いから野菜を売って、向こうからはよく肉を買ってね。時々売りに来ていたりもしたんだ。だが長が変わってからおかしくなってね。半ば脅迫のような形でうちの村から人質として娘を盗んでいったんだ」
「今私たちにできることはこうして隠すだけ、情け無いねぇ、本当に情けなくて申し訳なくて……」
奥さんはのどを詰まらせ涙を流した。
「村長の家の子がね人質になったの」
隠れている女の子の一人がぽつりとつぶやいた。