第128話 夜に生きるダークハーピー族 2
焚き火をしていたところ、黒い羽をしたハーピーの男たちに絡まれてしまった
ガラの悪い二人の黒いハーピーはいまだしつこく居続けている。
「あなたたち、これが最後の警告よさっさとどこかへ行きなさい」
フィリアナが剣を構え警戒する。しかしそれに怯むどころか二人はゲラゲラと笑っている。
「おいおい、いくら人数が多いからって勝てるわけ無いだろ。火を消したら俺たちの勝ちなんだから」
「ハハハいーね、追いかけっこしてひとりずつ捕まえてく?」
火を消したら勝ち?ということはこれがこいつらの弱点なのだろうか?いや違う、追いかけていくと言ったのだからそうではない。
「まさか暗い中でも目が見えるのか?」
俺の言葉に二人は呆れた表情を浮かべる。
「なに?お前まさか俺たちがなにか知らないの?さっきの質問てそういうこと?」
「嘘だろ?これで冒険者って、まあじゃなきゃこんな女つれてここらへんうろつかねーよな」
そういうことならシャリンよりもすばやく闇の中で動けた理由がわかる。
「じゃあ誰からにしようかなー」
みんな自然と焚き火を守る体制に入る。それを見て二人はまた馬鹿にするように笑い声をあげた。
「おー面白いね、どれだけ守ってられるかなー?」
「じゃあ俺は先にあのガキのエルフからいただくわ」
「ちょっお前、抜け駆けすんなよ」
最高に気持ちの悪いやり取りを見せられ今すぐに殴りたい気持ちだが、この状況では俺たちのほうが不利だ。まだ夜が明けるまでには相当時間がある。
そのときまたどこからともなく一人の黒いハーピーが現れた。今度は女でタバコを片手に不機嫌そうに歩いてきた。その姿を見て馬鹿騒ぎしていた二人は嫌そうな顔をする。
「なんかうるせぇと思ったらお前らかよ、これならワライイヌのほうがまだお上品だ」
彼女は気だるそうに煙を吐きながら低い声で話し始めた。
「チッなんでお前がいんだよ」
女は舌打ちをした男をギロリと睨みつけた。紫色の瞳が焚き火の明かりを反射し、鈍く光る。
「なんだっていいだろ、それよりさっさと家に帰ってお手伝いでもしな。クソみたいなお前らでも少しは役に立つだろ」
「ケッお嬢様がいい気になりやがってよ、くそったれ」
そう吐き捨てると二人は森の中へと姿を消した。
「あ、あの助かりましたどうもありがとうございます。えっと失礼ですがなんという種族なんですか?」
俺の質問に女はタバコをくわえながら襟足が紫色に染まった黒髪をかき上げた。
「ダークハーピーだよ、ここいらはあいつらみたいなのがいるからさっさとどっかいきな」
「いやちょっと道に迷ってしまって、フラワーハーピーの村に行きたいんですが」
「一本道間違えてるよ、こっから先行って右曲がりな」
ダークハーピーの女は焚き火で新しいタバコに火をつけると他の二人と同じように森の中へと消えていった。