第126話 スライムパニック ♥
原生生物のフックハンガーを観察していた亜李須川(このエピソードには少々性的な内容が含まれます、苦手な方は読まなくてもストーリの進行に大きな影響はありません)
翌朝俺はみんなより早く目が覚めたので先に外へ出て桶の水で顔を洗った。昨晩降っていた雨も止み、すがすがしい朝を迎えている。
「ヒロおはよー、ねえ見てこれ拾ったのなーんだ」
俺より早起きしていたのかすでに朝から元気一杯のピヨは翼になにかゼリーのようなものを乗せ、見せてきた。
ゼリーのような物体は透明で水のようだ。触ってみてもとくになにも感じない。
「今からこれでみんなを起こしてきたいと思います!」
そう言うと彼女はまだみんなが寝ている洞窟へと入っていった。手についているゼリーを服にこすりつけ朝食の支度にとりかかろうとしたとき、ふとずぼんに穴が開いていることに気がついた。
それはどんどんと広がってゆき、俺がゼリーをこすりつけた場所全体に大きな穴があいてしまった。それどころか量が増えている気がする。
「なんだこれは一体……」
ピヨを呼ぼうとしたとき洞窟の中から悲鳴があがった。
「イヤー!ちょっとなんですのこれは?!服がなくなっていきます!」
なんだかものすごく嫌な予感がする。フィリアナの声を皮切りに次々に洞窟から飛び出してきた。
「ちょっとなによこれ、私の服ボロボロじゃない!」
「い、いゃあ、な、なによ、気持ち悪いわ」
ニーナとローレンが同時に出てきたが言葉通り服はぼろきれのようになり、両腕で体を隠している。
「大変ですわ、ヒロさん敵に襲われています!」
フィリアナも同じようにほとんど裸の状態でかろうじて下着が残っているだけだ。しかも増えたゼリー状の物体が全身に絡み付いておりとんでもないことになっている。
「や、わ、悪い!とりあえずなにか着てくれ!」
俺は目を逸らし、上着を脱いだ。これだけじゃ到底隠し切れないがないよりましだろう。
そう思ったとき目の前にスッとシャリンが現れた。
「アリスガワ、気をつけろこいつらはお前の服を溶かすぞ」
そういう彼女は上半身の服は溶け、着ている下着も肩紐が片方切れぎりぎりの状態だ。
「うわー!お前だろ気をつけるのは!」
「私はもう手遅れだ」
「そんなこと言ってないでこれを着ろ!」
俺は持っていた上着をシャリンに着せた。後ろからニーナの怒っている声が聞こえる。
「ちょっとなんであんただけ助かってんのよ!」
「えっそれは……」
「こっち向かないでよ!!」
声につられて振り向こうとした俺はニーナの尾に打ちのめされた。
「あらら大変ね、こんなもの持ち込んじゃって」
地面に倒れている俺のそばにエレナーゼがやってきた。もとから裸の彼女は人事のようだ。
「これが何か知ってるのか」
「ええ、これはスライムよ。見てのとおりほとんどが水でできてるの。普段は乾燥を嫌って土の中でじっとしてるんだけど雨が降ったりすると出てきて集合するのよ。食べ物は植物の繊維、葉っぱね。だけど大好物は洋服、やわらかくておいしいんでしょうね」
これがあの冒険序盤にでてくるスライムか……少し性質は違うみたいだが。言われたとおり人体に害はなさそうだが早朝から最悪のスタートとなった。