第124話 バッドロマンス
スタンレイからのプロポーズを断ったフィリアナ
次の日俺たちは新たな目的地を定め出発した。進行方向にある一番近い村はここから少し離れた場所にあるようだ。
「時間はかかりますが素敵な場所ですよ、フラワーハーピーの村です」
サービタウルスの少女はそう言ってにっこりと笑った。優しそうな名前の種族でほっとする。
出発の際に多くなった荷物を持ち運べるようケンタウロス用の小さな荷車をもらった。俺たちは寝袋などの雑貨を乗せ、フィリアナに引いてもらうことにした。
村の人にお礼を言い少し歩き始めたところで木の陰からスタンレイが姿を現した。フィリアナの表情が険しくなる。
「もう行ってしまうのか残念だ、いや、特に言うことはないんだがせめてこれを受け取ってくれ」
俺は彼からクッキーと少しのお金を受け取った。
「どうやらうぬぼれていたのは俺のほうだったようだな、もし旅から帰ってきてまだ俺のことを覚えていたらこの村に寄ってくれないか?そのときは君に見合うような良い男になっておこう」
スタンレイは頭の後ろをかきながら恥ずかしそうに告げた。
「そうですね、でもそのころにはわたくしはもっといい女になっているでしょうからどうでしょうね」
フィリアナの答えに彼は肩をすくめて笑った。
「ははは、これは一筋縄じゃいかないな、さすがだ。安全な旅になることを願っているよ、それじゃ」
そう言うと彼は小走りで村へと帰っていった。その後フィリアナは何事も無かったかのように荷車を引き歩き始めた。
「はあ~なんてロマンチックなんだ……。すてき……」
カルベネがワインを抱えて一人感傷に浸っている。
「あんたにもそんな感情があるのね驚きだわ」
ニーナにそう言われ彼女はさも心外だ、という顔をした。
「わがままお姫様には言われたくないな、あんたこそそんな感情あるのかい?」
「なっあたしにだってわかるわよ!恋愛小説ぐらい読むわ。……なによ、みんなしてそんなおかしい?」
フィリアナはふふふ、と笑い声をあげた。
「いえ、すいませんちょっと意外で、そうですよねだれだって憧れますものね」
「そうなのよ、男がちょっと強気に手なんて引いちゃってさ、俺の女になれよ、ってありえないと思うけどドキッとしちゃうのよねー」
頬に手を当てるニーナをシャリンは不思議そうな顔で見つめている。
「あ、でも実際にあたしやられたら平手打ちしちゃうかも」
「なんとなくわかりますわ、わたくしも反射的に手をふりほどいてしまうかもしれません」
二人の発言にシャリンは今度は小さくうなずいている。
ドキッとするシチュエーシュンなのに平手打ちとは、女の子の気持ちは複雑だ。