第123話 鈴踊りのサービタウルス族 4
夜、踊りへと誘われたフィリアナ
スタンレイに誘われたフィリアナは恥ずかしそうに広場の中央へと共に進んでいった。
彼は正面から手を取り彼女の腰に手を回した。繊細な音色に合わせ社交ダンスのようにステップを踏む。フィリアナもそれに合わせて細い足を前後に動かす。
かわいらしい鈴の音は聞こえない。その代わり二人の蹄が草を静かに踏む音が演奏の合間にリズムを刻む。月明かりはまるで二人だけを照らしているようで、まさにお似合いの二人を周囲はじっと静観している。フィリアナの洗い立ての緑がかった長い髪が夜風になびき、そこだけ切り取られた映画のワンシーンのようだ。
演奏が終わり二人は歩みを止めた。スタンレイが離れていく彼女の手をそっと引き止める。
「なあ、俺は君ほど美しくて強い女の人は見たことが無い。初め見たときは世間知らずのお嬢さんかと思ったよ。だけど君は本当の騎士だ、だれよりも美しく咲き誇る白いバラのようで俺は君のことが……」
スタンレイがそう言いかけたとき、フィリアナは握られていた手を振り払った。
「ごめんなさい、だけどだめなんです、わたくしにはまだやりたいことがある。ここで歩みを止めるわけにはいかないのです。わたくしには進むべき道と守りたい仲間がいる、そして今よりもっと強くならなくてはいけない」
彼女は最後にお礼を言うとその場を後にした。恋に破れた男はただ去っていく彼女の背中を眺めることしかできなかった。
「あーあーいいの?逃がした魚は大きいよー?あんないい男、そうそういないと思うけどー?」
「はあ、言ったじゃないですかわたくしにはやるべきことがあるって。ではカルベネさんがお相手になってあげてはいかがですか?」
フィリアナの返しにカルベネは苦い顔をする。
「そりゃ私がもうちょっと綺麗で胸がでかけりゃ行ったかもしれないけど、それにほら私はそういう縛られてるのは向いてないし」
フィリアナはカルベネをそれで?というような顔で見つめた。
「わーかったよはいはい、女は胸の大きさじゃない。立派な騎士にならなきゃね」
カルベネは肩をすくめて先へ行ってしまった。
「なあいいのか?その俺に言えることじゃないんだけど」
するとフィリアナは後ろから俺の肩に抱きついてきた。
「ひどいですわヒロさんまでそうおっしゃるのね、わたくしを捨てていくおつもりですか?」
「うぐっ、いや違うけどちょっ苦しい……。からかうのは止めてくれよ」
彼女は体重をかけぎゅーっと体をくっつけてくる。完全にからかわれている。その後俺はまるで大きなテディベアのようにハグされ持ち上げられてしまった。