第122話 鈴踊りのサービタウルス族 3
サービタウルスの少女に伝統的な踊りの一つである鈴踊りを教わった亜李須川とフィリアナ
その後俺たちは村にある空家に案内してもらった。確かに質素な造りだが野宿するよりはるかに快適だ。
「ちょっと恥ずかしかったですが楽しかったです」
「うーんロマンチックゥいいねぇ~若い二人の甘酸っぱいダンス」
フィリアナの純粋な気持ちを横切るようにカルベネが茶化す。
「やめろまったく昼間から、とりあえず今日は休もうそれで明日食料とか買いに行こう」
さすがにこの人数ではベッドが足りないので俺は居間に置かれた古いソファーで寝ることにした。みんながいなくなった後ピヨがまだ起きていることに気がついた。
彼女は眠い目をこすりながらもエレナーゼにもらった本をじっと眺めている。
「そろそろ寝ろよあんまり夜更かしすると起きられなくなるぞ」
「うん……わかってる、けどピヨ魔法できるようになりたいから……」
そう言った後、ピヨは静かに目を閉じた。俺はピヨをソファーに上げ毛布をかけた。
初めに出会ったころに比べるとだいぶ成長したように感じる。正直、ついてくると言ったときもう一日もたたずに家に帰るかと思っていた。
俺は……どうだろうか、今までの行動を見返しても恥ずかしくなるだけだ。俺はピヨの寝息を聞きながら一緒に目を閉じた。
次の日俺たちは予定通り食料や雑貨を調達したり服を洗濯したり、武器の手入れを行い一日を過ごした。
一日の終わりに先日案内したくれた少女が俺たちを訪ねてきた。
「こんばんわ何か必要なものはありますか?私たちにできることならぜひおっしゃってください」
「それじゃ風呂屋とかこの村にないかな?」
「あっお風呂ですね、わかりました!ありますよこちらです」
彼女に先導されひさびさの風呂を堪能することができた。水浴びだけではどうしても体の汚れは落ちきらない。体の大きなケンタウロスが入れるようかなり大きかったのできっとみんなも入れただろう。
風呂からの帰り俺たちは再びきれいな音色を耳にした。しかしそれは昼間の鈴の音とは違いバイオリンやハープのような繊細で優雅な音だった。
音のするほうをのぞいて見ると子供たちに代わり今度は大人がつかの間の休息を楽しんでいた。
広場は小さなろうそくの明かりに照らされ、シンプルな演奏に合わせ静かに踊りを楽しんでいる。やわらかなオレンジ色の光と漂う花の香りがどこか妖艶さを醸し出している。
「わあー素敵、この香りはなにかな?」
ポリーンはうれしそうに辺りをすんすんとかぎまわっている。
「これはアロマキャンドルだ、香料が蝋に練りこまれている」
踊る人たちの合間を縫いスタンレイが姿を現した。彼はゆっくりとこちらに近づくとフィリアナに手を差し出した。
「えっあ、あのわたくしまだ踊りは全然……」
「そんなの気にするなリードは俺がとる」
彼は彼女の手を取ると広場の中央へと引いていった。