第121話 鈴踊りのサービタウルス族 2
次の村へと到着するとそこは以前出会ったケンタウロスの男の故郷だった
鈴の音のするほうへ歩みを進めるとそこには沢山のケンタウロスとサービタウルスが足に鈴をくくりつけて踊っていた。ほとんどが少女で子供から大人まで皆、楽しそうに練習をしている。
「わぁ素敵ですわ」
「これを見るのは初めてですか?私たちは伝統的な踊りだと思っていましたが」
少女の言葉にフィリアナは首を横に振った。
「いえ、わたくしの住んでいた町にはこのような風習はありませんでした」
「そうですか、それは残念です。ではこの機会に挑戦してみてはいかがですか?」
踊りの誘いにフィリアナは少し迷っているようだ。
「でもわたくし踊りなんて産まれてこのかたやったことありませんし……」
「やってみたらいいじゃないか、フィリアナもケンタウロスなんだし種族の伝統を学ぶのも大切だと思うぞ」
俺は彼女に参加してみることを勧めた。横を見るとピヨとポリーンはすでに地元の子供たちと仲良くなり、ゴムとびのような遊びをしている。
「それではお二人でやってみてはいかがですか?」
「えっ?俺も?いや俺人間だし、それにこれ男も踊るのか?」
突然の提案に驚いている俺に少女は男女でペアになる組み合わせもあるのだと説明した。
「この踊りにはさまざま種類があります。当然カップルでも踊りますよ」
「え、え、わ、わたくしはそんなかっカップルだなんて」
顔を赤くしているフィリアナをよそにサービタウルスの少女は俺たちの足に片方ずつ鈴をつけた。
「基本の姿勢は二人が横に並びます、そして男の人は手を腰に回してもう片方は女の人の手を握ります」
俺は言われたとおり左腕をフィリアナの腰に回し、右手で彼女の左手を握った。フィリアナは手を交差させるように右手を腰に回した俺の手に重ねた。
だいぶ体格差がありなんだかそちらのほうが恥ずかしくなってきた。
「いいですね、では同じほうの足を前に出してください」
それから二人で手ほどきをうけながらぎこちなく踊りを続けた。足を動かすたび鈴の音が弱弱しく鳴る。
周りの人は初めはそんな俺たちの様子を冷やかし半分で見ていたが、だんだんと近くに寄ってきて一緒に踊り始めた。それにつれフィリアナの緊張も解け、ふと視線をあげると彼女は恥ずかしさ半分楽しそうな表情を浮かべていた。
すると沢山の鈴の音をかきわけ、もはやけたたましいと言ってよいほど大きな音が聞こえてきた。
音のほうに目をやると酔ったカルベネがシャリンを振り回しものすごい踊りを披露している。
「えと、お友達の方ものすごい踊りをされるんですね……」
俺とフィリアナは二人で同時に謝った。