第119話 未開の道 2
フィリアナの提案によりまずは一番近くの村を目指すことにした一行
俺たちは地図を目印に次の村へと歩き出した。
「ところでエレナーゼ、いいのか付いて来ても?」
「ええ、女王に外の世界を見てくるように言われてるのよ」
それはとても心強い、彼女はかなり頼りになる。
そして相変わらずピヨは歩きながら魔法に奮闘している。
「どうだ?できそうか?」
「さっきね、さっきねちょっと出たんだよ!ボンてね、もう一回やってみるね」
そう言うと彼女は翼を合わせむぐぐと力み始めた。近くではポリーンが息を呑んで見守っている。しばらくするとだんだんとピヨの翼の間の空気が熱くなってきた。
「おっなんかここらへん熱くないか?」
俺が手を近づけそう言った時、バンという爆発音とともに火花が散った。
「あちっ!うわ本当にでた!すごいなー」
しかし熱かったのは俺だけではなかった。なぜか魔法を使ったピヨも驚いて後ろに飛び退いている。羽の一部が黒くこげ、煙が立ち上っている。
「え?なんでお前もダメージを受けてんだよ」
「ふふふ、それは当然よ。火は誰の味方でもない、じぶんが擦ったマッチで火傷するでしょ?」
エレナーゼがその様子を見てクスクスと笑っている。確かにそう言われればそうだが今まで自分の魔法でダメージを受ける魔法使いなど見たことは無い。これが本当の魔法なのだろうか。
「あちち、じゃあピヨどうしたらいいの?」
「簡単に言うと自分の周りに魔力の壁を作るの。俗に言うバリアーってやつね。だからただ火力を上げればいいってわけじゃない、魔法を出した後のことも考えて魔力を使わなきゃいけないの。単純で高火力、だけど危険な属性それが火、初心者が基礎を学ぶのにはもってこいね」
なるほどだから初めは火からスタートなのか。だがこの説明を聞いてピヨはさらにわからないという顔をしている。
「なあそれって俺にもできるのかな?」
「うーんそうねぇできなくもないかもしれないけど、あなたからは魔力を全く感じないのよ。そもそもあなたの元いた世界には魔法が無かったのかもしれないわ」
もしもあったのならみんな使ってるか……でもこの考えからするとあの手紙の差出人がいたとされるもう一つの世界が俺がいた世界だとする考察の信憑性が弱くなる。
なぜならおそらく接触してきたのはもう一つの世界の住人のほうからだ。すると俺のいた世界にも人を転移させることができるほどの強い魔術師がいたことになる。もしかして俺をこの世界へ引き入れたあの白い猫に何か関係があるのだろうか。
だが今思い返してみてもあれは紛れも無くただの猫だった。到底ダークエルフに関係があるようには見えない。
違うのならば手紙の内容は一体どういうことなのだろう。書いてある文字をじっと眺めて見たが、何も情報は得られそうに無かった。