第117話 決意の証明
エルフ族に協力を得て次の目的地、絶極大地を目指すことにした一行
俺は少し離れて座っているポリーンに声をかけた。
「おい、どうしたんだ?」
「ああヒロアキさん、いえなんでもないんです」
なんでもないという風にはとても見えない。
「なにか悩んでいることでもあるのか?俺でよければ聞くけど?」
俺はポリーンの隣にしゃがみこんだ。
「あの、私、変だとはわかっているんですが、戦いのときに人を刺してしまって」
戦いとはダークエルフとの一戦のことだろうか。
「人ってポリーンだれかと戦ったのか?」
「いえ戦ってはいませんが、ヒロアキさんが襲われていて私無我夢中で咄嗟に刺してしまったんです。そうしなきゃいけなかったということはわかるのですが、どうも刺した感覚が忘れられなくて」
もしかしてあのとき助けてくれたのはポリーンだったのか。
「わ、私みんなみたいに勇気が欲しくてこの旅についてきたのにいつも迷惑ばかりかけて……これじゃあずっと弱虫のままです」
いやそんなことないと口に出しかけたときニーナが割って入ってきた。
「あんたそんなんでこの先ついてくる気?無理なら帰んなさいよ」
「おいニーナまたそんな言い方、感じ方は人それぞれだろ?」
ニーナは腕を組みじっとポリーンを睨みつけた。
「あのね、この先もっと大変なことがある度にそれじゃ困るって言ってんの。いちいち人を刺したぐらいで泣きべそかいてないでよね!で?あんたはどうしたいの?」
ポリーンは涙目になりながらニーナを困ったようにじっと見つめた。確かに泣き言ばかり言っているようではこの先やっていけないかもしれない。
彼女は横のピヨに視線を向けた。しかしピヨは黙ったままなにも言わない。
「わ、私は、私はまだみんなと一緒に旅がしたい!私いつも足手まといだけど今まで生きてきた中でこんなに楽しいって思えることなかった。だれかのために何かしてあげたいって思ったの初めてだったから……!」
「じゃあそうすればいいじゃない」
ニーナは上体を戻してさらっと言った。
「え?でも……私みんなみたいに戦えないし、その、いつも邪魔ばかり。あのときだって私が行かなきゃヒロアキさん肩を怪我しなかった」
「なにも全員戦える必要ないでしょ?現にこいつあんたに二回も命救われてんのよ」
そう言ってニーナは俺を指さした。なにか言ってやりたいが本当のことなので悔しいが言い返せない。
「二回?そうでしたっけ?」
「一回目は犬に丸焦げにされそうになって二回目はあんたがさっき言ったやつ。私は見て無いけどどうせそんな感じでしょ?」
口に出しては言わないがあのときポリーンが来てくれなかったら俺は肩ではなく中央から真っ二つにされていただろう。
横で聞いていたピヨが口を開いた。
「それにね無謀と勇敢は違うんだよ。ピヨね初めは何にも考えずに突っ込んでいってヒロにいっぱい迷惑かけちゃったの。だから自分にできることで頑張ればいいと思うの」
ピヨの言葉にポリーンはにっこり笑った。すっかり元気を取り戻してくれたようで一安心だ。