第114話 証拠調査 2
もう一つの世界から来たという手紙を発見したが、未だ決定的な証拠は得られなかった
結局首謀者の男からは何も情報を得ることはできなかった。
「まあ仕方ありませんわね、これ以上何もでてこないのでしたら一旦下がるしかありませんわ。とりあえずサテュロスたちの問題は解決できたしよしといたしましょう」
「うーんそうね、手当たり次第に潰していくわけにも行かないし」
皆フィリアナとニーナの意見に賛同する。だがシャリンは納得できていない様子だ。
「だがこの魔法具をだれかが流しているのだろ?末端の事件を解決してもまたいずれ被害はでるのでは?私はもう一度調べて見る」
そう言うと滞在していた小屋を一人で出て行った。外は日が傾き始め彼女が帰ってくるころには真っ暗だろう。俺はランタンを手にシャリンの後を追った。
「なんだアリスガワも来るのか?」
「俺もまだなんか納得できないんだ、もう一つの世界の使者についてもう少し調べたい」
しばらく二人で森の中を進み調査を終えた家屋へとたどり着いた。
中は俺たちが手当たり次第に調べたせいで散らかっている。どこかに隠し扉があるかもしれないしもう誰かが証拠を隠滅しているかもしれない。
シャリンは地獄の門が開かれた部屋へ入っていった。そこにはあのときのまま溶けて固まった魔法石とひび割れた水晶玉が置かれていた。彼女はそっと割れた水晶に手をかける。
「ここで終わってしまっては……お前は家に帰れない……」
シャリンは消え入るような声でつぶやいた。
「俺のことは別に気にするな、何か他の方法を見つけるよ」
「でもどうする?闇のオークに協力は求められない、これがどこから来たのかさえわかれば希望はあるのに」
俺はふと水晶玉が乗っていた台に手を伸ばした。木ではなく鉄で作られておりずっしりと重い。裏側には見たことも無い紋章が刻印されている。
「もしかしてこれが生産者かもしれないぞ、ほらよく作ったつぼとかに自分の名前彫るだろ?」
シャリンはハッと目を見開いた。
「これだ!この紋章さえわかればどこで手に入れたのか突き止められる!」
俺たちは急いで帰路についた。道中、暗い森の中をどんどん進んでいくシャリンに置いていかれそうになってしまった。