第112話 闇の包囲網 4
首謀者のダークエルフをついに追い詰めることに成功した
カルベネは首謀者のダークエルフに剣を突きつけ命令する。
「この攻撃をさっさと止めさせろ」
男は命じられたとおりすぐに号令をかけた。辺りは一瞬にしてしんと静まり返る。そのなかを掻き分けクロウズリーが駆け寄ってきた。
「無事だったか?こいつがリーダーか?」
カルベネは引きずっていた男を皆の眼前に突き飛ばした。
「こいつ私のことを悪魔だなんて侮辱しやがった、情報を聞きだし後は舌を根元から切り落とせ」
地面に倒れている男を今度はクロウズリーが引きずっていった。それに合わせ周囲にいたダークエルフの戦士たちもすごすごと姿を消した。
情けなく命乞いをしている首謀者の男を後ろに俺たちは村の捜索を開始した。戦いの中で負傷してしまったフィリアナとニーナ、セシリアは一足先にポリーンとピヨを連れサテュロスの村へと引き返していった。
その後男のものと思われる家屋の中でさまざまな魔法具や本、手紙を発見した。
「おいアリスガワ、これを見てみろ」
シャリンに言われて様子を見に行くとそこには大量の宝石が山のように積み上げられていた。以前目にした水晶玉も置かれている。どうやら地獄の犬はこれによって召喚されたようだ。
「もう一度あの魔術師を連れてこよう」
俺の提案にシャリンは不思議そうな表情を浮かべた。一度引き返し護送されている途中だった年老いたダークエルフを連れ戻した。
「え、え、なんの用でしょう?」
「もう一度地獄の門を開け」
俺の命令に男もシャリンと同じような顔をする。
「そ、それは……魔力も多く使いますし今はちょっと無理かと」
渋る男に俺は無理にでも開けるよう命じた。するとしぶしぶ大量の宝石に自身を力を込め始めた。
宝石は男の魔力に反応し光り、中央に配置された水晶に吸い込まれていく。次第にバチバチと音を立て始め、発せられた熱で周囲の温度がどんどんと上がっていく。
力を吸収した水晶からはもくもくと煙が上がりやがてその小さな暗雲から地獄へと続く扉が開いた。
「アリスガワ、これでどうするんだ?!」
すさまじい音と熱気の中シャリンが俺に向かって叫んだ。俺は家から飛び出すと急いで犬が入っている檻を空けた。中から出るように促すと弱った犬はとぼとぼと付いて来た。
「ほら地獄へ帰れ!」
縮こまってぐったりしている犬をシャリンと共に空間にできた小さな穴に投げ込んだ。その後バンという大きな音とともに穴はすぐに閉じた。
魔術師の男は電池が切れたようにばったりとその場に倒れた。水晶には大きなヒビが入り、周囲の宝石はどろどろに溶けてしまっている。
「こ、これは……アリスガワお前、これじゃお前が帰れなくなってしまったじゃないか」
シャリンが割れた水晶を持ち上げ寂しそうにこちらを見た。
「まあしょうがないほかに探すさ、それに俺のもといた世界へこいつが扉を開けられたかわからないだろ」
少し残念な気もするが今はこれが最善だ。なんだか前も似たようなことを考えていた気がする。