第111話 闇の包囲網 3
カルベネと仲間の助けにより窮地を脱することに成功した
俺はカルベネと共に首謀者の後を追いかけた。年老いたダークエルフは数人の護衛を引きつれ森の中へと逃げようとしている。
「おいこら待ちやがれ!」
先を急ぐカルベネの前に二体の護衛が立ちふさがる。だが顔つきがどうもエルフ族にしてはごつすぎる。肌は灰を被ったようにくすみ、体格は以前であったオークに似ている。
「なんだこいつらは?」
「これは……たぶん闇のオークだと思う。ここに来てこれかよ」
これが闇のオークか……こいつらの仲間が以前フィリアナの故郷を襲うよう森のオークを仕向けたのか?
二人は早速俺たちを始末しようと武器を取り出す。そのとき突然横から矢が飛んできて一人の肩に突き刺さった。
思わぬ方向からの攻撃にその場にいた全員が横を向く。森を案内してくれたフォーン族のエルデンとその仲間たちが数名、草むらの影から姿を現した。
「ここは自分たちが引き受けます、お二人はダークエルフの後を追ってください」
俺たちは彼らが二人のオークに飛び掛るのと同時に脇をすりぬけ森へと走った。少し進んだところで森の中をもたついた足取りで逃げている後姿を発見した。
カルベネは木の根や岩を飛び越えるようにしてものすごい速さで追いかけると後ろから掴みかかり、近くの木へと押し付けた。
「おいゴラァてめぇ何一人で逃げようとしてんだよ?ひとんちからもの盗んどいていい度胸じゃねえか!」
彼女は森にこだまするほど大きな声で怒鳴りつけ、腰から短剣を引き抜きダークエルフののど元に突きつけた。
「くっこの野蛮なあ、悪魔め……」
この言葉を聞いたカルベネはさらに激高し相手を地面へと押し倒すと馬乗りになった。
「悪魔だと……?もう二度とそんななめた口きけないように舌を根元まで裂いてやろうか?」
「ぐっグフフ愚かな、出来損ないの悪魔め」
そう言うとダークエルフは手を持ち上げた。相手は何か攻撃を仕掛けるつもりだ。
俺が忠告する前に彼女は短剣を下品に歪んだ口の中へ突き立てた。
「ウッウググ……グッ」
カルベネは無言のまま体重を少しずつかけていく。相手は上げた手を短剣にそえ必死の形相で止めようとしている。
「お、おいそこらへんまでにしておけ殺しちゃったらなにも聞き出せなくなるだろ?」
話のできない男はそうだそうだと言わんばかりにバタバタと暴れている。カルベネはチッと舌打ちをすると剣を抜き相手の上から降りた。
「おらさっさと立て」
俺たちはすっかりおとなしくなった首謀者を引きずるようにみんなの元へと帰った。