第104話 サテュロスの宴
盗賊の一人であるダークエルフを捕らえたと報告を受けた亜李須川
カルベネの言葉に俺より早くクロウズリーが反応する。
「おいおい本気で言ってるのか?お前行ってどうするんだよ、危ねえぞ」
彼の心配をよそに彼女は楽観的だ。
「まあなんとかなるだろ、危なそうだったら私だけ逃げてくるからさ」
そう言うとカルベネは俺の腕をつかんだ。
「ほらこっちに来て酒を飲もう面白いもん見せてやるよ」
腕を引かれた先には人だかりができていた。中央では二人のサテュロスが肩を組み、頭を突き合わせている。
「これは角相撲と言ってな、蹴りや殴りはなしで相手を先に投げ飛ばしたほうが勝ちなのさ」
すると組み合っていたうちの一人が頭突きを食らわせその隙にもう一方を横に投げ飛ばした。ワッと周囲から歓声があがる。
「サテュロス族に伝わる伝統的な競技だ。こっちにも来てみろ」
言われたとおりについて行くと楽器を奏でる音が聞こえてきた。子供たちが集まって練習をしているようだ。楽器の形は細い長さの違う筒がいくつか並んでくくってある。
音は少しくぐもっているようだが、透明感のある響きがあとを引く美しい音色を奏でている。
「これはパンフルートって言ってな、こう上から空気を吹くんだ。あともう一つあっち見てみな」
それとは別に全く違う音を奏でている楽器がある。パンフルートとはまるで正反対の短く連続したエキゾチックな響きが特徴的だ。
二本のフルートをいっぺんに口にくわえて、両手で演奏している。
「あれはアウロスって言うんだ。なかなか難しいんだ、器用なもんだろ?」
すると子供たちは練習に飽きたのかお互いにちょっかいを出し始め、終いには楽器を置いて走り出してしまった。子供たちは俺の周りをぐるぐる回ったかと思うと、いきなり頭突きをかましてきた。
「いてっなにすんだよもう……」
子供はけらけらと笑いながらどこかへ走っていった。
「いいのか?あれで」
「はははサテュロスはあんなもんさ、飽きっぽいのよ」
その後俺はぶっ倒れるまで自慢のワインを飲まされた。