第103話 事件の真相
盗賊からワインを取り返すことに成功した亜李須川たち
次の朝、俺は外から聞こえてくる騒がしい音で目を覚ました。それと同時に小屋の扉がバンと開け放たれる。
「兄さんいつまで寝てるんだよさあさあ起きて」
カルベネは状況が読めない俺をぐいぐいと引っ張り小屋の外へ連れ出した。まだ日が上りきってないというのに村中の人が集まり大騒ぎをしている。
もうすでに空のボトルがいくつも地面に転がっている。
「な、なんの騒ぎだ……」
目が開ききっていない俺にカルベネは大きな声で答えた。
「なにって昨日のことを忘れたのか?盗まれたワインが返ってきたからみんなでお祝いさ!」
なんでも良いが俺はまだ寝ていたかったし、まずは顔を洗いたい。すると昨日出会ったシーレノスの男がワインを片手に寄ってきた。
「よお昨日はお前たちを犯人あつかいして悪かったな、あーえーっとアリス……なんとか。俺はクロウズリーだ」
「アリスガワな」
すると俺が出て行ったのに気づいたのか後ろからフィリアナがやってきた。
「あら今日はお祭りなのですか?」
辺りをきょろきょろと見渡している。その姿を見て男が彼女の元へ集まってきた。先ほど話をしていたクロウズリーももういない。
「ねえ、姉ちゃん名前なんていうの?」
先ほどまで寝ていたせいかいつもの鎧はまとっておらず、柔らかいシャツのせいで体のラインがいつも以上にはっきりとわかってしまう。それも相まって男たちの目は彼女に釘付けだ。
「俺と二人きりで飲まない?高いワインだすよ」
「ふざけんなどけっ」
たちまち囲まれてしまった。その光景に彼女はうんざりという顔で視線をそらした。
「わたくしでなくても他に誘うべき方がいるのではないですか?」
「なに言ってんだよあんたほどいい女はいないさ。この村の女どもはみんなぶどうの搾りカスみたいにしぶくって声なんてかけたところで振り向きもしねぇ」
その言葉に皆口々に賛同する。
「ではわたくしも同じです」
そう一言残すと群がる男をかきわけどこかへ行ってしまった。
「まあそう簡単にはいかねえよなぁ」
がっかりする男たちの中でクロウズリーがやれやれと肩をすくめる。その後彼は再び俺のところへ戻ってきた。
「そうだお前にいうことがあった、昨日捕まえた盗賊いただろあいつはダークエルフだ」
あれがダークエルフなのか。その事実に一瞬にして緊張が走る。
「あいつは近くの村から来たらしい。お前知ってるか?王国の近くにあるんだ」
そこが俺たちの目指していた村に違いない。クロウズリーの話によるとその盗賊はただ命令されただけの下っ端でワインは金のために盗み出されたらしい。
「俺たちはそこに向かおうとしているんだ、ここ以外にもすでに被害がでている」
「そうか気をつけろよあいつらは恐ろしい、光のエルフでさえ近寄りたがらない」
そこへカルベネがやってきた。
「兄さん行くのかい?だったら私も連れて行ってくれよ、あいつらを痛い目に合わせなきゃ気がすまねぇ」