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第101話 ワイン泥棒 5

フィリアナの背にシャリンと共に跨り、ワイン泥棒の馬車を追いかけることとなった

 他の仲間を置いてフィリアナはどんどんと森の中の道を進んでいく。幸い木が少なく夜道は月明かりにはっきりと照らされている。


 だが今俺はそれどころではない。落ちないよう必死に足を踏ん張り腰にしがみついている。後ろからは先ほどのケンタウロスの男が追いかけてきている。


 すると前方に馬車の後姿が見えてきた。


「あっあれですね追いつきましたよ」


 馬車はこちらの姿に気がつくと突然馬を走らせ始めた。せっかく縮まっていた距離がどんどん開いていく。


「こんなところで逃がしませんわ!」


 そう言うとフィリアナはさらにスピードを上げ始めた。しかし二頭の馬は速く、俺が乗っているせいもありなかなか追いつくことができない。


 荷馬車の中からはビンどうしがぶつかる高い音が聞こえる。


 馬車の上に乗っている男は手綱を波打たせ馬を走らせる。いつ飛び移るべきか考えていたとき、フィリアナはぐっと体を馬車に寄せると手綱を引っ張った。


 御者(ぎょしゃ)は綱を握ったままわずかにこちらに体を崩す。その隙に彼女は腕を伸ばし力任せに男を馬車から引きずり下ろした。投げ出された御者は地面を転がっていく。フィリアナが代わりに手綱を引き、半ば強引に馬を引き止めた。


 馬車は斜めに滑りガシャンという音を立てて止まった。


 俺とシャリンが彼女の背から降ると同時に止まった馬車からも数人、人が降りてきた。暗闇に目を凝らして見ると耳がエルフのようにとがっており、心なしか肌が黒っぽく見える。おそらくこの馬車を護衛しているのだろう。


 盗賊のうちの一人が剣を振りかざしこちらへ襲い掛かってきた。それをフィリアナと後ろから追ってきたケンタウロスの男が迎え撃つ。


 俺が腰から剣を抜いたそのとき馬車の陰からなにか黒い影がこちらに向かってものすごいスピードで飛び込んできた。その影は隣にいたシャリンをさらって草むらへと飛び込んでいく。


 あっという間の出来事に俺は一瞬なにが起こったのかわからなかった。


「シ、シャリン?どこに行ったんだ?返事をしろ!」


 俺は馬車についていたランタンを取ってあたりを照らした。だがどこにも彼女の姿はない。


「どこだ?どこにいる?」

「こ、ここ、だ……」


 シャリンの苦しそうな声がどこからか聞こえる。しかしその小さな声は闇に紛れ見つけることができない。


「ハア、くっ、アリスガワ……ここ、だ」


 神経を集中させろ、そう俺は自身に言い聞かせた。早く見つけなくては彼女は助からないかもしれない。すると後ろのほうからかすかに草がこすれる音が聞こえた。


「そこにいるのか?!」


 俺が草むらを掻き分けるとそこには黒い人影に押し倒されているシャリンの姿があった。


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