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第100話 ワイン泥棒 4

ピヨとポリーンを置いてワイン泥棒を追う一行

 俺たちが村の中央へ戻ると隣の村から騒ぎを聞きつけたらしいケンタウロスの男が立っていた。あわてて来たようで服を着ておらず剣だけを腰から下げている。


「何事だ?なんの騒ぎだ」


 村人の一人が今の事態を説明した。ケンタウロスの男は俺たちのほうをちらりと見る。


「まさかお前たちも行くのか?」

「ええそのつもりですわ」


 フィリアナの返答に男はフッと鼻で笑った。


「悪いことはいわねぇお嬢さん方やめときな。家に帰ってそこでおとなしくしてるんだ」

「そうできたらやってるよ、いくぞ!」


 腰から短剣を下げたカルベネはそう言うと車輪の跡があった場所へと歩いていった。それに数名の村人が続く。


 男は肩をすくめると後ろからついてきた。


 俺たちは真っ暗な中ランタンの明かりを頼りに消えそうな足跡をたどっていた。一寸先は闇という言葉がぴったりなほど暗く、街頭一つ無い夜道は本能的な恐怖を感じる。


 夜の本当の恐ろしさはもといた世界では一生感じることはできなかっただろう。目の前を真っ暗に塗りつぶしている闇はランタンの光さえ吸収しているみたいだ。


 しばらく進むと森が開けた場所へとたどり着いた。そこには月明かりに照らされた一件の石造りの廃屋が建っていた。


 俺たちは草むらの影からじっと様子を伺う。


「だれかいるかもしれない俺が様子を見てこよう」


 そう言うとシーレノスの男は一人で廃屋へと近づいていった。


 しばらくすると彼は戻ってきてだれもいないことをみんなに伝えた。男の言うとおり小屋のなかにはだれもおらずもぬけの殻だ。しかしよく見てみるとあたりに紐や工具、布などだれかがいた形跡がある。


「おいアリスガワこれを見てみろ」


 外からシャリンに呼ばれ行ってみると裏手には火を使った跡が残っていた。


「まだ新しいぞ」


 シャリンの言うとおり燃えた木からはかすかに煙が立っている。今さっき消したばかりという感じだ。


 表に回るとケンタウロスの男が他の仲間と一緒に地面を見ている。


「どうやらここで荷物を積んで馬車で運んだようだな。蹄の跡からして二頭か……」

「私たちも今裏手を確認してきた、今さっき出発したばかりみたいだ」


 幅の広い車輪と馬の蹄は森の中の道へと続いている。


「今行けば間に合うかもしれません、ヒロさん、シャリンさんわたくしの背中に乗ってください」


 俺は突然のフィリアナの提案に驚いた。そもそも俺は馬など乗ったことは無い。せいぜい子供の頃動物園でポニーに跨ったぐらいだ。


 しかし隣ではシャリンが一つうなずくとフィリアナの助けを借りてスッと跨っている。ここでできないなんて口が裂けても言えるわけが無い。


 俺は二人の助けを借りてフィリアナの上に乗った。鞍のついていない背中は思ったよりつるりとしていて今にも滑り落ちてしまいそうだ。


「しっかり掴まっていてくださいね」


 そう言うと彼女は森の中へと走り出した。


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