第98話 ワイン泥棒 2
現場検証することを提案した亜李須川
俺たちはワイン泥棒の犯人を捜すためカルベネの酒蔵を調査した。
「だれにも見つからずにあれだけの数のワインをいったいどうやって運び出したんだろうな」
一番の疑問に皆首を傾げる。
「ねえここは?」
ピヨの声に振り返ると壁のほうじっとを見上げている。そこには通気口が開いていた。鉄格子のような金具で入り口が塞がれている。
グッと引っ張るとねじはゆるくなっており簡単にはずれてしまった。発見が遅れるようわざわざはめなおしたのだろう。
「外へ行ってみよう、もしかしたらまだなにか残っているかもしれない」
通気口が出ている辺りを見渡したがそこにはなにも落ちていなかった。外が暗いせいもあるかもしれない。カルベネはまた明日の朝、調査しようと言った。
みんなが去っていく中俺は少し考えた。ワインはここから運び出されているのは確かだ、まさか手で持ち帰ったとは思えない。そうなると何かに乗せて運ぶ必要がある。
リヤカーのようなものに積んだのだろう。
俺は地面をランタンの明かりで照らした。なかなか戻ってこないのを心配したのかシャリンが近づいてきた。
「アリスガワ、なにをしているんだ?」
「いや運び出した跡がないかなーって思ってさ、車輪の跡のような」
するとシャリンも腰を曲げ地面を見渡し始めた。
「おいこれを見ろ」
彼女の声に顔を上げるとシャリンは一部泥でぬかるんだ地面を指差している。そこにははっきりと何かが通った跡が残っていた。
二本の車輪と引いていた者の足跡だ。それは森の奥へと続いている。
「よしこの跡をたどって行けば犯人にたどり着くわけだ。みんなを呼んで来よう」