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暴走の余波~幾重にも重なった偶然~

 彼女が見たものは振りかぶって虚空を殴っているクレアシオンの姿だった。彼の拳は何もないところで何かにぶつかったように抵抗があり、そして、――――割れた。虚空にヒビが入ってガラスのような音をたてながら割れたのだった。


「な、なんですか、それは!?」

「?アイテムボックス」

「ぜんぜん違います!これがアイテムボックスです」


 そういいながらソフィアは自分の開いたアイテムボックスを指差した。クレアシオンのものは空間にヒビが入っていて、その穴からは何処までも暗い闇が広がっており、今でもパラパラと透明な破片が落ちていた。対するソフィアのアイテムボックスはというと、丸い黒い穴がある。


「練習中だ。いずれお前たちのようなアイテムボックスをつかえるようになる」

「いえ、ご主人様、ぜんぜん違います!!」


 過程がぜんぜん違った。アイテムボックスは特殊なスキルなので、普通は神と神に選ばれた者しか持つことが出来ない。魔力で空間を作り、そこに物を収納するスキルだ。だが、


「次元に穴を開けてますよ、それ!?」


 クレアシオンのアイテムボックスは次元に穴を開け、そこに物をしまっていた。クレアシオンのアイテムボックスはアイテムボックスではない。名付けるなら、【アイテムボックス(力業)】だった。殴って次元に穴を開ける。それはスキルでは再現出来ない、創造神すら想像していなかった言うなれば、【バグ】だった。


 クレアシオンがまだ見習い天使だったころから、勇者や神に祝福された者や神がアイテムボックスを使っているのをみて、密かに努力して独自に取得した業。幾千にも重なる次元の中の一枚のみに力を加え、次元に穴を開け、そこに物を収納する業だ。


 まず、普通は次元を捉えることは出来ず、捉えられても一枚のみに力を加えることが出来ず穴を開けられないか、開けることが出来ても崩壊が始まってしまう。もし、次元に穴を開けられても、物を収納するには繋ぎ止めている必要がある。そのため、常に魔力をくいう、非常に繊細で非常識な業だ。創造神がクレアシオンにストレージを与えようとしたとき、このクレア式アイテムボックスを見せられて腰を抜かしていた。この業は、スキルでは再現出来ず、他の者は創造神ですら真似できないクレアシオンの技術だ。故に、ステータスに表れない、スキルではない。


 クレアシオンがどや顔で披露したときの周りは「クレアがいいなら、いいんじゃない?」という感じだった。予想外すぎて、事のレベルが高過ぎて神ですら理解が追い付かなかった。ある意味、またクレアシオンがやらかした、と考えたようだ。


「それは危険なので、私が収納します!!」

 

 剣はソフィアのアイテムボックスに収納されることに決まった。そして、


「しまってる物も出してください。預かります」


 すると、出てくる出てくる。大量の果物にハチミツ、樹液のシロップ、卵。【アイテムボックス(力業)】はアイテムボックスと違い、物が多ければ多いほど魔力を食うというのに、食べ物を大量にしまっていた。役目を終えたクレア式アイテムボックスは逆再生したようにパキパキと音をたてながら閉じていく。 


「そのアイテムボックス?は二度と使わないでください」


 下手をすれば次元の崩壊が起きるような業だった。それを危険視したソフィアが二度と使わないように忠告する。だが、


「それは出来ない」

「……なぜですか?」


 ソフィアは目を細める。


「俺の戦闘スタイルに必須だからだ」


 そう、【クレア式アイテムボックス】はクレアシオンが戦闘において必要だから開発したものだ。彼の戦闘に必須、否、土台と言っていいだろう。彼の強みは瞬時にかわる千変万化の戦いだ。それを支えていたのが【アイテムボックス(力業)】だった。もし、これが無ければ彼は武器を瞬時に替えることが出来ないだろう。瞬時に替えることが出来なければ、それは大きな隙になってしまう。


 もはや、息を吐くように行使できるまでに極めていた。最初は力一杯殴って開けていたが、今では力を必要としないで使えるほど幾千の戦闘の中で洗練されている。


 そんなアイテムボックス?を今さら禁止します、は出来ない。わざわざ、自分の戦力を落とすような事はしない。使える物は何であろうと使う、使わずに、出し惜しみをして死ぬなんて馬鹿らしい。


 ソフィアはクレアシオンの真面目な目を見て、溜め息を吐きながら、


「……はぁ、普段は私がアイテムボックスを使いますからね」

「ああ、頼む」

 

◆◇◆◇◆

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 【魔素支配】 万象の素である魔素を屈服させた者のみ、使えるスキル。【傲慢】により取得。魔素を支配し、万象を統べる事ができる。魔素を吸収し、自分の保有魔力に変換できる。魔素をそのまま魔法、魔術に使用可能。その時、魔素が魔法陣を形成する。

 

 【糖気闘乱】 血液中の糖分を使いステータスを大幅に上昇させる。ただ、血液中の糖分を使いきると動けなくなる。


 【眷属創造】 幾千もの邪神を殺してきたとき、【強欲】により、強奪し、蓄えられてきた【眷属作製】の欠片が【創造】により、創り変えられたスキル。創造者が望む姿で現れる。また、創造者が強くなることによって進化することがある。創造時、魔力を込めた量に強さが比例。創造後も魔力を与えることにより、微量だが能力が高くなる。眷属創造後、このスキルは消滅。


 【神器創造】 幾千もの邪神を殺してきたとき、【強欲】により、強奪し、蓄えられてきた【神器作製】の欠片が【創造】により、創り変えられたスキル。創造者が望む姿で現れる。また、創造者の強さによって神器の耐久値、切れ味、攻撃力があがる。創造者しか使用出来ない。神器創造後、このスキルは消滅。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「……魔素を屈服させたのですか?」

「……記憶にございません」


 ソフィアは若干引きぎみに尋ね、クレアシオンは政治家のような事をいってごまかしながら、彼はうろ覚えな記憶を呼び覚ます。


――星降る空に願うのなら、願え、生き残れることを――

――それは絶望より産まれし希望――

――万象よ、ひれ伏せ――

――破壊の波が全てを零に還す――

――我は世界の理をねじ曲げる者なり――

――我は正義を騙らない、全ては我の意志の元に――

――崩壊を促せ、破壊しろ――

――創造の前には破壊あり――

――我が望む世界を切り開くために――




――傲慢な我は鉄槌を下す。【ジャッジメント・セイクリッド・メテオライト】――


 詠唱していた。


――言ったけど、言ってたけど、ひれ伏すなよ……。


 全てはこのG(重力式)(加速広)(範囲殲)(滅型神)(聖魔法)が原因だった。万象はこの時、ひれ伏していたのだった。これにより、職業が【魔王】になったと言っても過言ではないだろう。もちろん、これだけで【魔王】になったわけではない。【魔王化】とこれまでの称号、行いに寄るところが大きい。だが、あの地形ごと破壊するような広範囲殲滅魔法、【傲慢】な物言い、全てをねじ伏せるような【力】で万象の素である魔素を屈服させ、支配下に置いたことによって、職業が【魔法剣士】から【魔王】にジョブチェンジしたのだ。

  

 また、あの重力式加速広範囲殲滅型神聖魔法により、【創造】を取得していたのだ。【創造の魔王】はこの魔法が由縁だ。


 その取得した【創造】とクレアシオンが浴びてきた無数の邪神達の返り血から、無意識に強奪していた本来であれば取得しなかった筈の【眷属作製】と【神器作製】のスキルの欠片が書き換えられた魔法陣によって【眷属創造】と【神器創造】に創り変えられたのだ。


 前提条件とし、幾千もの数えるのも億劫になるほどの邪神や悪神を殺してきたことがあり、そこにたまたま、【強欲】を持っていたことが重なり、今回、書き換えられた転生用魔法陣で転生し、【創造】を取得した結果だ。どれかひとつが欠けていたら取得出来なかった。


 それに、クレアシオンの【強欲】がスキルを強奪できるのなら、殺した数だけ、神器と眷属を持っていただろう。


「【眷属創造】も【神器創造】も、【強欲】と【創造】が合わさって出来たのですか……。……まあ、そのお陰で私は存在できるのですが……。ご主人様、眷属と神器はいま創りますか?」


 ソフィアは自分が生まれたのはクレアシオンが滅茶苦茶な事をしたお陰だと察して複雑そうに呟いてから、気を取り直して眷属と神器を創造するかきく。


「いや、お前を創った時に魔力が尽きかけている。今度にしよう」

「わかりました」


 クレアシオンはソフィアを創造した事と、【創造】で剣を創った事で保有魔力が尽きかけ、エネルギーが減ったことにより疲労していた。それに、体の年齢的におねむの時間だった。明日はエレノアとおままごとをして、アニスとジェフと釣りにいく約束をしていたので、出来るだけ早く終わらせたかったこともあり、眷属と神器は、また後日となった。

ありがとうございました。


ソフィアの元々考えていたキャラが毒舌系の冷たい感じだったのにツッコミ系になってしまった……。


クレアシオンを絡ませたらこうなってしまった……。

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