夢の前
夜
元気なくジョンはサーカスまで向かう、その隣にはマリアが居る
「ジョン大丈夫? 顔色悪いわよ」
「今の俺にあまり触れないで下さい」
「何よ、今まで散々好き勝手な事を言って来たのにこういう時だけ自分の言う事を聞いて貰おうなんて甘いわ! さぁ! サーカスに着くまで存分に語らいましょう!」
「執事虐めはみっともないですよ」
「主人虐めの方がもっと悪いわよ!」
そう二人で騒いでいるといつの間にかにサーカステント前に着く
その巨大なテントの前には多くの人間が並んでいたり、立ち止まってテントを見て居る者も居た。そしてそんなお客を飽きさせない為にピエロがジャグリング等をしてお客を喜ばしている
「わ……すごい人ね……やっぱり人気なんだぁ」
「何が良いんだか……」
Cランク以上のチケットには席の番号が書いてあるので並ぶ必要は無いがDランクのチケットは立見席なので場所取りの為に並ぶ必要がある
ジョン達がその列をボーと見て居ると
「あ! ジョン! 見て! あれセルフィじゃない?」
列の一番後ろにセルフィが並んでいた。綺麗な白いドレスを着ている
「わぁ……綺麗」
マリアはそう言ってため息を吐き、自分の方を見る
「ねぇ、ジョン私も負けていないでしょう?」
「マリアお嬢様の圧勝ですね、よ! 世界一!」
「……そう言われたらそう言われたで腹が立つわね……」
ジョンは近付きたくなかったがマリアが向かって行ったので仕方が無くセルフィに向かっていった。
そしてよく見てみるとセルフィを見て居るのはマリア達だけじゃなく周りの他の人達もセルフィを見て見惚れている
「うわぁ、綺麗」
「エルフだよ! あの人!」
「初めて見たぁ」
セルフィの前で列に並んでいる人からも
「い、いいよ、変わってあげる」
と順番を変わってあげると多少の下心も含めながら言われている
「いいえ、そんな……悪いです」
「いや、いいよ」
「私は大丈夫ですから、気にしないで下さい」
「そ、そうなんだ……ごめんね」
「い、いえ……」
お互い会話が苦手な様でそこで話が終わってしまう
「セルフィ!」
そう呼ばれたので振り返るセルフィ、するとマリアが手を振っているのを発見する
「あ、マリアさん……ジョンさん」
今まで独りだったので心細かったセルフィの顔は少し明るくなるがジョンの顔を見て次は赤くなる
「マリアさん達もサーカスに?」
「えぇ! そうよ! 言ってなかったかしら?」
「うん、聞いてませんよ」
「あら、そうだったかしら?」
「えぇ……若呆けですか? 可哀そうに」
「呆けて無いわよ!」
「ふーん、まぁそんな事よりセルフィお前に渡したい物が有ったんだ受け取ってくれ」
「? 何ですか?」
そう言ってジョンは自分が持って居たチケットをセルフィに渡そうとする
「え?」
「!?」
セルフィはチケットに書かれているA-2と書かれた文字を見て驚愕する
「い、いえ! こ、こんな、頂けませんよ!!」
「別に俺の事は気にするなよこのチケットは無理矢理渡された物でね、サーカスなんざ見たくないんだがどうしても見ろと言われて仕方が無く来てるだけなんだ」
「本当に良いんですか……?」
「俺は受け取ってくれた方が助かる」
「……本当に?」
「しつこいぞ」
「あ、ごめんなさい……」
「ジョン! セルフィが怖がってるじゃないの!!」
「そりゃ失敬しましたね」
「ほら、ジョンが良いと言っているのだから受け取れば良いのよ」
マリアはジョンからチケットを奪ってセルフィの手に無理矢理突っ込む
「ありがとうございます。ジョンさん、大切にします」
「礼は要らない、これは交換条件なんだからな、そのDクラスのチケットを寄こせ」
ジョンはセルフィのチケットを奪う
「案外と良い所あるじゃない、ジョン」
「案外は余計ですよ」
「あ、あのジョンさん」
「何だ?」
「このドレス似合っているでしょうか……?」
ジョンはセルフィの足元から頭まで見て
「さぁ?」
と言った。
「なによその感想! そんな感想聞いた事が無いわ! かわいいとか素敵とか言いなさいよ!」
「そうは言われましてもね、どうでも良い事に一々感想なんて持ちませんよ」
「あ、あなた! 言って良い事と悪い事があるのよ!」
「俺がそんな区別付けられると思ってるんですか? それが出来れば今頃友達百人は出来てますよ」
「何偉そうに言ってるのよ!」
「やっぱり、似合ってないのかな……」
セルフィはそう言って俯いてしまう
「そんな事無いわよ、この意地悪男がおかしいだけよ」
「おかしくて失敬」
開演まで後二十分という所でサーカステントの扉が開く
並んでいた人達が一斉に中へ入って行く
「あなた、行かなくて良いの?」
「言ったでしょ? 俺は別に見たくないんです。だから後ろの方でも構いません」
「あらそう……全く、ノリが悪いわね」
マリアは不機嫌そうに腕を組む




