道化師再上
「つまり此処でクローンの研究が行われていた訳だな」
「いや此処には結界がある、あくまで此処は倉庫として使われていただけ現場は別の所にあるのだろう」
と言ってバーングはその額の汗を拭った。
「……馬鹿な師匠に国の命令に背く程の度胸は無い筈だ」
「人は変わるもんだ」
「有り得ない! それは絶対だ!」
「そうは言ったって此処にこんなドーンッと証拠の品が有るのに?」
「……」
「兎に角此処を出ようクローン研究の痕跡も見つけた事だしな」
暗い階段を登っている間もバーングは何か考え込んでいる様だった。
そして出口から外に出るとそこにはナサルとジェイクが立っていた。二人共明らかに怒っている
「よぉ、お元気?」
「元気か? だと……お前は私が言った事を忘れたのか!?」
「此処から動くなと言って居た事か? 悪かったな忘れてた」
「……」
ジョンを無言で威圧するナサル
「そんな事より大ニュースだ。この奥でクローン研究に関わりがある物が見つかった」
ジョンに怒りを感じていたナサルにジェイクだったがジョンのその一言で全てが吹き飛ぶ
「な、何!? クローンだと!?」
「あぁ、奥に行ってみな」
ジョンを退かしジェイクとナサルは奥へと急ぎ向かって行った。
「何だ。お前は行かないのか?」
「私はさっき見ただろ、何回見ても結果は変わらない……私は休む」
「俺もこれ以上厄介になる前に脱出しますかね」
ジョンは館を出た。館のすぐそこにはマリアが待って居た。その隣にはキュベルが居る
「あ、ジョン……どうだった?」
「残念ながら誰も見つかりませんでしたよ」
「そう……」
マリアは俯く
「そう気を落とさず、人は何時か死にますからね……」
「……な、何よそれ! 普通そんな事言う!? 不謹慎よ!」
「クククッそりゃ失敬、まぁ俺達じゃ何も出来なさそうですから捜索は騎士団に任せて俺達は館に帰りましょう」
「……そんな、友達が危険かもしれないのに家に帰ってのんびり過ごせと言うの?」
「もし今頃殺され掛けているとしても何も知らない俺達じゃ助けられませんよ、無駄に気を使うぐらいなら今は休憩して英気を養い、本当に力が必要な時に全力を発揮するのがベストだとは思いませんか? お前もそう思うだろ? キュベル?」
「マリア様、此処はジョンの言う通りだと思いますよ」
「……わかったわよ」
マリアは納得していない様だったが仕方が無くジョンについて行く
「あら、誘って置いてなんですけど、そういえばナサルを待ってたんじゃないんですか? 俺について来て良いんですか?」
「えぇ、ナサルは忙しいんでしょ? なら私の相手をさせる訳には行かないわ」
「まぁ確かに、でも一応この事を言って置かないと後々面倒な事になりません?」
「大丈夫よ、多分……」
「ナサルには私から報告しておきますから安心して下さい」
「そりゃどうも」
マリアの屋敷に向かうそして家路の途中に
「あ!? お前は!!」
白い道化師の様な化粧をした女性がジョンを指差しそう叫んでいる
顔を隠すジョン
「そんな事をしても無駄だ! お前ジョンだな!」
「久しぶりだな、お元気?」
彼女の名前はクァイケット、とあるサーカス団の団長だ。
「お元気? だと? お前の所為であの後も散々だったんだぞ!」
「ふーん、まぁそんな事はどうでも宜しいな、俺に関係無い」
「な、なにを!?」
不安げに二人を見守るマリア
「で? 俺に何の用だ? 俺に復讐?」
「ふん、そんな気は無い」
そう言ってジョンに何かを差し出すクァイケット
何かの紙切れの様だ。
「このゴミを俺に捨てて来いと?」
「違うわ! これは今夜開かれる我らサーカス団のチケットだ」
「……興味なし」
「え?」
「別にサーカスなんか興味無いと言ったんだ」
「そ、そんな、楽しいぞ?」
「何故恨んでいる俺をお前のサーカス団に招待しようとするんだ? 気色悪い」
「別にお前の事は恨んでいない、お前の事を見返してやろうとしているだけだ! お前は私の事をただの可笑しな奴だと思って居るだろう!? だからステージで光り輝く私を見て私の事を見直せ!」
「……な、なんだそりゃ、お前も変な奴だな、なんで俺の周りには変人が集まるんだ?」
彼も変人だからである




